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『婚約破棄された令嬢の行く先は限られています』
『それならわたしは、自分で生計を立てる道に進みたいのです』
これが、魔法薬草園の門を叩いたときのローザの言葉だった。
ステンドグラスから燦々と光の差し込む魔法薬草園の事務所は、まるで聖堂。
その美しさを、ローザは今でもまざまざと思い出せる。
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「ローザ。大事な話がふたつあります」
事務所で記録簿を整頓していたローザは、すっと顔を上げた。
「ふたつ、ですか?」
目の前には園長が公爵としての正装で立っていた。
王城帰りだということが判ってローザは背筋を正す。
「えぇ。あなたがここに来て1年が経ちました。いつも真面目に働いてくださってありがとうございます」
ローザの特徴は吊り目。 それを少しでもやわらかく見せるための丸眼鏡の奥、戸惑いが浮かんだ。
濃い緑色の瞳に、ひとつに束ねた明るめの金髪。
アイボリーを基調とした制服はパンツスタイル。ここで働きはじめてから、スカートの類は履いていない。
「待ってください、その切り出し方はまさか、解雇……」
ローザの顔が蒼くなりかけたところに、園長が制する。
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