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かなり前からそう思っていた。だが根拠のない、ただの勘だ。それが当たっていたとしても、認めるとは――否定を一切しないとは。
時田は深い息を吐いた。
「……なんかさ、稲川と山城、雰囲気おかしくなってんじゃん。仲直りできんのかな」
「できるだろ。女の喧嘩って、そんなもんみたいだぜ。うちの姉貴なんかも、友達とわーってやばそうな喧嘩して、わーって仲直りしてるし」
内藤は少女ふたりの顔を思い起こす。
「あいつら仲いいし、平気だよ、きっと」
「だぁよなぁ。ならいいんだけどさぁ」
寒さに白い息を吐く時田が、嬉しそうに笑った。
次の話題を脳裏で手探りする――稲川のことで時田をからかうか、自分が山城に好意を持っていると教えるか。
内藤のまぶたに浮かんだ山城と稲川は、楽しそうに笑っていた。
(了)
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