1-1 あたらしいともだち

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 廊下の照明は消えていて、ひどく薄暗い。明かりが消え児童の姿がないだけで、校舎が不気味に様変わりしている。  唯は先に下校していった彼女たちの、やや後方をひとりで歩く自分を思い浮かべた。校門を出てしばらくは、長い一本道になっている。ひとりで廊下を歩いているのはさみしいが、彼女たちと距離を置いて歩くのよりはよさそうだ。  ここなら少なくとも気まずい思いをしないですむ――そう思ってしまう自分の気の弱さに、唯はうんざりした息を吐いていた。  唯が穫掴小学校六年一組に転入し、まだ一週間ほどである。  ついこの間の春、引っ越しが本決まりになった。家族で祖母の家で暮らしはじめた。  他校に転入するのは本当はいやだった。  仲のいい友達と一緒に卒業式を迎えたかった。そして仲のいい友達と一緒の中学校に進みたかった。だが小学五年生の秋、父方の祖母が足の骨を折り、そのまま寝ついてしまったのだ。  転んで足の骨を折ったという知らせに、すぐに寝たきりになった、と残酷な続報が届いた。転倒は検診のために訪れた病院での出来事だった。  誰かが祖母の面倒を看なければならなくなり、そのため唯の家族は引っ越して来た。  祖母の部屋には、レンタルした介護ベッドがある。真新しいベッドだ。それは唯には病院のベッドに見えた。新しいベッドと、清潔な寝間着。そして寝具。それらに包まれた祖母ばかりがくたびれている。
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