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「用ならあるよ」
優羽が舞子の語尾に噛みつくようにいった。
「……なんの用だよ」
「これからいじめるの」
クラスメートたちの顔に貼りついていた笑みが消え、一様に優羽をにらんだ。
「これから、ねちねちいびるの。わざとぶつかったり、無視したり、嫌味いったりする予定なんだけど。邪魔しないでくれる?」
「……受験生が、そんないじめ白状していいわけ?」
「先生に報告してくればいいんじゃない? そうしたらいじめっこらしく、稲川さんにはいじめなんてないっていわせるし、先生にはそんなひどいことしません、ってしおらしくするから」
舞子が険のある顔をする。
「元々あんたが調子乗ってたのが悪いって、思わないわけ?」
「言いたい放題だったのは確かだね。それについては謝るけど、便乗するばっかじゃなくてもっと主体性持てば?」
「便乗って、どういう――」
「誰かのいいなりってこと。指図されたり持ち上げられたりしないと、ひとりで行動できないわけ?」
舞子たちとの間に漂う雰囲気が、見る間に険悪になるのがわかる。小春が口を開こうとすると、貴理子が手を叩いて笑った。
「班行動じゃないとやだっていうんならさ、先生にいって、あたしが稲川さんとチェンジしたげよっかぁ?」
「いらねぇよ」
舞子は小春のすわるソファを蹴って、廊下を戻っていった。クラスメートたちがそれに続く。
見送ってから、優羽が小春に謝って来た。
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