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「よけいなことしてごめんね。ほんとにさ、うちの班の部屋来ればいいじゃない」
「どうして?」
「どうしてって……今晩木瀬さんたちの部屋にいても、ゆっくりできないと思うよ」
「そうじゃなくて、どうして心配してくれるの?」
優羽が迷うのがわかった。
彼女は的確な言葉を探し、くちびるを湿らせた。小春に関わろうとしてくれているその時間に、小春は勇気づけられた気がした。
「木瀬さんの、いった通り……かな」
小春は首をかしげた。
「最初に私が山城さんに絡んだりしなければ、こんな状況にはならなかったんじゃないか、って」
そこに友美が細い声で割って入った。
「前に優羽ちゃんが山城さんにそういうこといったからって、いま気にするのは……気にしちゃうのは、しかたないかもしれないけど、もう優羽ちゃんのせいじゃないと思うんだよね」
小春はうなずいていた。友美が安心したような、だが強張った笑みを見せる。
「体育のマラソンの練習で……山城さんとしばらく走ったことあるんだよね。あのひと怖かった。優羽ちゃんがどうのこうのじゃなくて、あのひと、自分がやりたいから……怖いことしてるんだと思う」
館内放送が入った――消灯時間になります、点呼を取りますので宿泊室で待機していてください。
時計の針は十時を指し示そうとしていた。小春は立ち上がる。痛みのなか、咎めるような優羽の視線を受け止める。
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