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唯がロイロイティルを気に入っているといい、小春の提案で、ふたりでロイロイティル用にきれいなドレスを考案した。陰気な服より、明るい服のほうがいいよね、と唯が笑う。一緒に椅子を並べて本を読んでいた。一緒に駄菓子屋で真剣に買い物をしていた。一緒にただ道を歩いていた。
目が覚めた小春はの顔は、水をかぶったように涙でびしょびしょになっていた。
唯にどんなに冷徹な態度を取られても、小春は彼女を嫌いになれない。さみしかったり悲しかったりするだけだ。
身を起こし、熱でだるい頭で小春は自覚したことがあった。
――唯が孤立していたとき、彼女を独占できて嬉しかったのだ。
歪んだ気持ちに気づいて、小春は顔を覆って泣き出した。傷つき続けた唯が不憫なのか、自分の取り返しのつかない行動がつらいのか、こたえをつかめないまま泣き続けた。
●
「はやく来ないと駄目でしょ」
おじいさん先生に怒られた。
「我慢してても楽しくないんだから、はやくいらっしゃい」
翌日になっても、小春の熱は下がり切らなかった。前日よりだいぶ身体は楽だったが、憂い顔の母と祖母に圧され、小春はかかりつけの内科で診察を受けた。
帰りにくだものでも買いなさいね、と多目の金額を預かっている。食欲が戻りつつある小春は、お弁当屋で一番高いものを買ってみようかと考えていた。
調剤薬局では予想外の大荷物になった。
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