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辞退する言葉が出て来なくて、ずるずると小春はおばさんに引っ張られるようにして歩くことになった。
久しぶりに訪ねた山城家は、以前と家具の配置が変わっていた。おばあさんのものが整理され、全体的に若々しい印象になっている。収納家具が増えていて、なのに以前より広く感じた。
「誘っておいて、簡単なものでごめんね」
手早くおばさんは野菜のたくさん入った雑炊をつくってくれた。
「食べられそう?」
うなずいて、ありがたくいただいた。しかし器の半分ほどで急に食欲がなくなり、申しわけない気分で箸を置く。
水をもらって薬を飲んでいると、あらたまった様子でおばさんが口を開いた。
「最近ね、唯が元気なくって……あの子、学校でうまくやれてるのかしら。前に、カバン隠されたりしたでしょう?」
またいじめられたりはしていないか――おばさんの目は真剣だ。
どうかいじめられているなんて間違ってもいわないでね、と念を押すような色があった。小春は緊張する。ちょっとでも変な言い方をしたら、おばさんはきっと信じない。平気ですよいまはいじめるほうなんです、そういってみたい気持ちが、少しだけわき起こった。
「唯ったら、あんまりしゃべらなくなっちゃって……学校でのこと訊いても、なんていうか、はぐらかされてるような……」
「唯ちゃん、まだおばあちゃんが亡くなったことが……」
小春が言い淀むと、おばさんは納得したように何度かうなずく。
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