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「あの子、おばあちゃん子だったから」
「あの、おばあちゃんにお線香上げさせてもらっても、いいですか」
「ええ、どうぞ。おばあちゃん、小春ちゃんがお線香上げてくれたらきっと喜ぶわ」
通されたのは、介護ベッドが置いてあった部屋だった。
誰かがそこで息を引き取ろうとする、しめやかで陰鬱な空気は過去のものだ。小ぶりな仏壇があって、仏花が活けられている。故人を知っているせいだろうか、位牌を見ても暗いものは感じなかった。
仏壇の前で腰を下ろそうとした小春は、ふらついてへたりこんだ。手を出そうとしたおばさんに、照れ笑いをする。すみません、と謝ると、おばさんは小春のひたいに手を当て息をついた。
「……ごめんなさいね、具合が悪いのに、長話につき合わせちゃって」
「あの、そんな――」
図々しくもご飯をごちそうになって、おばさんに気を遣わせて、小春はきまりが悪い。
線香を上げて手を合わせる。熱心に願った。唯と仲直りしたいです。故人に願うのは筋違いな気がしたが、小春はたっぷり三分は手を合わせた。
「ねえ、なにを買うつもりだったの、そこのスーパーでしょ?」
「くだものとか……スポーツ飲料とか……」
「おばさんにつき合ってもらったんだし、待ってて、買いにいってくるから。ちょっと留守番しててね」
遠慮する小春を振り切っておばさんは立ち上がった。いいからいいから、と連呼し手を振り、おばさんは出ていった。
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