13 うそつきさがし

7/13
前へ
/259ページ
次へ
 急に静かになった他人の家、小春は仏壇を見た。  思いついたことがある。  行動するか迷った。  大いに迷いながらも、小春の足は立ち上がっていた。ふらつくそれは、自分の足ではない気がする。  仏壇を三度振り返った。  罪悪感を覚えてしまう前に、小春は――唯の部屋に入った。  行き来があったころと、部屋の様子は変わりなかった。  部屋のすみに畳まれた布団がある。それにカバーをかぶせたものをソファ代わりに、ふたりですわって話しこんだりした。もとはおじいちゃんの部屋だったという。和室はいやだといって、唯は押し入れの襖が見えないようインド綿でカーテンにしていた。カーペットのグレーと、カーテンにした朱の鮮烈なエスニック柄のせいで、不思議な雰囲気の部屋になっている。  小春はこの部屋の空気が好きだった。  学習机に、見たことのあるブックカバーを見つけた。すぐ手の届くところにある。指はふるえることなく、すんなりそのノートをつかんでいた。  小春は薬局の紙袋の間にノートを挟んだ。エコバックにしまい、それから仏壇の前に正座をした。  手を合わせる。  私は――泥棒をしました。  行動に遅れ、ようやく動悸が高まって来た。  おばあちゃんは仏壇にいるのか、お墓にいるのか、天国にいるのか。それとも小春の真横で、おこないを憂い顔で見ていたのか。  泥棒をしたら、地獄行きでしょうか。  目を閉じた。  唯ちゃんは、悪くないんです。
/259ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加