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ふたりきりの内緒です、今度はきっと内緒です。
優しいあの子のしあわせ探し。
ちょっとの誤解で仲違い、こんなにさみしいことはない。
素直な気持ちでごめんなさい、謝る勇気が出て来ない。
許してくれるか不安です、涙が出るほど不安です。
やっぱりあの子が好きだから、涙をふいたら会いにいこう。
優しいあの子のしあわせ探し。
合図で一緒に走り出す、見えないゴールを目指します。
仲良しあの子がいるならば、遠い場所まで走れます。
風になるほど走ったら、きっと全部が終わってる。
いやなことなら消えるはず、あの子の笑顔を見たいです。
●
「稲川、来なかったなぁ」
下校中、時田がぼやいた。
「風邪だったら、そのうち来るだろ? なんなら見舞いいく?」
「迷惑だろー」
内藤の提案に、時田が歯を見せて笑った。ぶつぶつと口のなかで、迷惑迷惑とくり返していた。
ちょっとうつむいた時田の影がやけに薄い。ダッフルコートのしゃかしゃかうるさい音を立てながら、内藤は道に転がっていた空き缶を蹴る。かろろんと耳に楽しい音を聞いて、ずっといってみたかったことを口に出すことにした。
「でもさ、おまえ稲川のこと好きなんじゃないの?」
はぐらかしたり照れたりと、時田が否定するものだと思った。怒り出すかな、とも思った。
しかし当の時田は、うん、と真顔でうなずいた。
「まじで?」
「なっちんだから、いったんだかんな。誰にもいうなよ」
「……おう」
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