1-1 あたらしいともだち

3/10
6人が本棚に入れています
本棚に追加
/259ページ
 横たわった祖母が、ベッドごとゆっくり朽ちてゆく気がしていた。ゆっくりと時間をかけ、ふとした拍子に気がつくようなはやさで、祖母は弱り痛み朽ちていっている。すでにベッドは祖母の一部になっていた。終わりに向かう姿に祖母の悲嘆がつきまとい、新しいベッドは唯にとって憂鬱の象徴ともいえた。  祖母はベッドで生活している。眠り食べ排泄し、呆然とした顔つきで過ごしていた。骨折した祖母は、あっという間に自力で動けなくなった。そのことが唯にはとてもショックだった。  もう無理だ、と父がいうのが信じられない。お父さんのお母さんなのに。  将来母が老いて骨折し動けなくなったとき、父のように突き放す言葉を口にするのだろうか。  怖い想像だ。  唯にとってなにより怖かったのは、先がないとか後をお願いか、暗い言葉を祖母自身がか細い声で訴えてくることだ。  唯の耳には、それは死にたくない、と聞こえた。  そういうときの祖母の目は涙で潤っている。心にもないことを祖母は口にしている。そうであってほしい――孫である唯の手をつかむ指の力は強い。歩けないのが嘘ではないか、と勘ぐってしまうくらいに強い。  夜、両親がリビングで向かい合い、囁くように交わす会話がある。
/259ページ

最初のコメントを投稿しよう!