俳句だか川柳だか分からないけど十七音の例のあれ

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 五月四日。つまりゴールデンウイークの三日目。私こと蓼丸多恵(たでまるたえ)は朝十一時だっていうのにベッドの上で惰眠を貪っていた。黄金の週間っていう甘美な響きに中てられて、午前三時までゲームをしていたせいだ。しかしどうだろう、世間では昨日から植田山ロープウェイの大事故の話で持ち切りだ。なんかワイヤーが切れて人がたくさん死んだらしい。ゴールデンウイーク優等生よろしく観光地なんかに行くと、あんな大事故に巻き込まれるかもしれないのだ。おうち万歳、怠惰万歳。  私はごろりと寝返りをうった。  とはいっても、だ。七時間も眠っていれば疲れは十分に取れてきて、遮光カーテンの隙間から差し込む陽光にイラつくことができる程度には目が覚めてきていた。だから、妹の文月(ふづき)がノックもせずに私の部屋に入ってきたのは起床するにはいい機会だったんだと思う。 「起きろダメ姉ぇ」  文月は部屋の蛍光灯をつけて、心底軽蔑したような口調でそんな言葉を私に投げつけた。小学四年生の妹に見下される高二の姉! ああ、私はなんと良い反面教師なのだろうか!  「まぶしい……」  寝ぼけた思考で自分を賛美しながら、布団を頭まで被せる。もうお昼だっていうのに蛍光灯の明かりがこんなにまぶしいとは。遮光カーテンっていうのは、本当に遮光するんだなあ。きっと社交性も高いんだろうなあ……。 「いつまで寝てんの? もう十一時だよ」  妹に布団をひっぺがされた。それで、ようやく意識もすっきりとしてくる。  遮光カーテンの社交性ってなにさ。
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