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「そういえば若菜から手紙来てたから。はい」
「ありゃ、そうなの。元気してるかなあ」
「たぶんね」
文月は私に開封済みの封筒をよこして去って行った。私は上半身が下着姿だけど、まあ誰が見るでもないからいいか、と考えて、そのまま椅子に座って封筒から中身を取り出した。
桑名若菜。私たちのいとこで、現在小学二年生。不幸なことに去年の大晦日、つまり五か月前くらいに両親と妹の香菜ちゃんを事故で亡くして、今はおばあちゃんちで暮らしている。
若菜と最後にあったのは、若菜ちゃんの家族の葬式の時だった。親戚の中で文月と私が彼女と一番歳が近かったから、通夜と葬儀の間は三人で一緒にいたのだ。その時の若菜は、おもったより感情的じゃなかった。あまり泣くこともなく、ふさぎ込んでいる様子もなく、私たちとは結構笑って接していた。
その時は、気丈にふるまっているのかな、と思って、ちょっと心配になったりもした。だから若菜とはそれ以来手紙でやり取りするようになって、状況を確認しているっていうかんじだ。
「……学校にも慣れた、か。よかった」
若菜は東京に住んでいたけど、おばあちゃんの家は新潟にあるものだから、当然転校することになった。この前私の方から送った手紙では、学校は大丈夫そうか、とか、寂しくはないか、とか、そんな事を尋ねたんだけど、でも、うまくやれているなら安心だ。おばあちゃんもおじいちゃんもやさしくて寂しくない、とも書かれていた。
「ん? ……俳句? いや、川柳かな」
手紙の最後に、五・七・五の歌が書かれていた。
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