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その時、女性の名札が目に入った。
『近間希望さん?』
「あっ、はい、そうです。一応警察官です」
『じゃあ近間さん。私はね、体は死んでいるんだけど、ずっと体から魂が離れられなかったの。なんでそうなったか理由はわからない。でも自分の体が生き物たちに食べられていくのを見ていたし、虫たちが私の体の中に寝床を作るのも見てきた。それを長いとは思わず、ただ時間の流れにゆったりと乗っていたら今になってしまったって感じ』
「……すごくリアルな話ですね……何か心残りがあったということでしょうか?」
顎に手を添えて眉をひそめる近間さんを見ていると、過去の自分を見ているようだった。
そういえば最近は考えるのをやめていた。
『さっきね……土から外に出た瞬間、急な斜面が見えたの。ガードレールも。あと……夜なのに月は見えなかったわ』
それだけの情報を伝えると、近間さんはハッとしたように何かを探し始める。埋もれていたスマホを手にすると、誰かに電話をかけ始める。
「あっ、もしもし、近間です! 急ぎで調べてほしいことがあって……はい、あのですね、ここから五時間以内で行ける範囲で、山道だと思うんですが、今日土砂崩れがあった場所……そうです、それで三十分前には月が見えない角度で……ほ、他にですか? ……あっ、一年くらい前には池があったけど、今はもうないそうです! ……えっ、本当ですか⁈ わ、わかりました! ありがとうございます!」
何かあったのかしら……そう思った時だった。突然またあの光が現れ、眩しくて目を閉じた瞬間、光に吸い込まれるのがわかった。
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