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 あら、またここに戻ってきたんだ。土の上で星空を眺めながら、思わずほくそ笑む。  生きている人と話すなんて、まるで夢見たいな時間だった。死んでるのに夢だなんて笑っちゃうけど。  木々の隙間から少しずつ日が差してくる。もう朝になる……と言ってもどうせ骨だし関係ないわね。  そしてしばらくぼんやりしていると、体の上をトカゲが這っていくのがわかる。こんなに小さな生き物たちが伸び伸び生きているなんて、死ぬまで知らなかった。ずっと土の中にいたから、こういうのは久しぶりでつい笑ってしまいそうだった。  その時だった。大声で話す人たちの声が聞こえてくる。  何事かしら。あぁ、土砂崩れの様子を確認しに来たのね。ということは、とうとう私の体が見つかる時が来たのかしら。  声を出したくてもどうにもならない。気付いてもらえるよう祈るしかない。  背後から近付いてくる足音がする。頭の向きと反対だから確認出来ない。 「あっ! ありましたー!」 「ほ、本当ですかー⁈ 今行きまーす!」  あぁ、とうとうこの時が来た。見つけてもらえたのは嬉しいけど、ちょっと恥ずかしい角度なのよ。  でも近間さんは、そんなこと気にするのは私くらいって言ってた。  警察官の服を着た人たちが、恐怖に怯えた顔で私を覗き込む。やっぱりちょっと恥ずかしい。 「見つけた……春佳さん、お迎えに来ましたよ」  この声って近間さん? そう、あなたが見つけてくれたのね。
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