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 土から掘り出された私は、骨格通りに机の上に並べられた。  あれから箱に入れられて運ばれた私の骨はキレイに洗われた。体がバラバラになって、少し変な感じはしたけどそれほど苦痛はなかった。キレイになったのはいいけど、ありのままの自分を見られているようで、なんだかむず痒い。  白衣を着た女性は、ボイスレコーダーに向かって話しかけながら、私の体をじっくり観察していく。  そこへ誰かが入ってくる。 「羽賀先生! どうですか?」 「あら、近間さん。今付着物を科捜研に回したの。ご遺体にはこれから向かい合うところ」  すると希望は何か話そうとしたが、一度躊躇(ためら)うように下を向く。それから意を決したように顔を上げると、真剣な顔で羽賀を見る。 「羽賀先生……怪しまずに聞いてくれますか?」 「……まぁ内容次第ね」 「実はこのご遺体、まだ魂が残っているんです。実は昨日の夜にお話をして……」 「……あなたの霊感の話は噂で聞いていたけど……本当だったんだ」 「大丈夫です。疑われるのは慣れてますし。信じるか信じないかは先生次第です」 「……わかった。どちらにしても、ご遺体には敬意を払うわ。で、霊は質問に答えてくれるのかしら」  二人の会話を聞きながら、これは返事を求められているのだと思い、反射的に口を開く。 『なんでも聞いてください』  私の声が聞こえたのか、近間さんは嬉しそうに笑った。 「大丈夫だそうです」 「じゃあ死因について。何があったのかしら?」 『ガードレールのない歩道を歩いていたら、背後から来た車にはねられました』  近間さんが丁寧に私の言葉を羽賀先生に伝えてくれる。  羽賀先生は私の腰の骨を持ち上げると、裏側を覗き込み、驚いたように目を見開いた。 「確かに……強い衝撃を受けたのね、ヒビが入ってる。どんな車だったかは見てないの?」 『はねられてすぐに地面に打ち付けられたので……あぁ! でも目を閉じる前に、白いスニーカーを見ました』 「スニーカー? 珍しいものならいいけど、かなり特定が難しいものよね。他には?」 『他……そう! 私の右手の甲に何かが刺さってました! 沈められた水の中で見た輝きはそれだったのね……』 「手の甲……?」  羽賀先生が私の手を取り確認するが、そこには何もない。あの時は確かに刺さっていたのに.…。 「確かに何かが刺さっていたような傷はある……もしかしたら科捜研に送った物の中に紛れているかもしれないわね……或いは土の中とか」  考え込む羽賀先生に、近間さんは目をウルウルさせ始める。 「羽賀先生! 信じてくださるんですね! 嬉しいです〜!」 「や、やめてよ! こっちのことはいいから、まずは科捜研に行ってみたらどうなの?」 「そ、そうですね! ちょっと行ってみます! 春佳さん、待っててくださいね!」  なんて慌ただしい子かしら……でも何かが見つかるような、そんな予感も感じ始めていた。 「さて……静かになったことだし、あなたのことを私にも教えてちょうだいね……」  そう言うと、羽賀先生は再びボイスレコーダーのスイッチを入れる。私はその言葉にそっと耳を澄ませた。  
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