あやかし蜘蛛族──愉快な面々

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あやかし蜘蛛族──愉快な面々

 地下深くの巨大迷宮にある、華糸と音糸の部屋の中は、一般的な人間のマンションとは異なり、だだっ広いフロアーがあった。その奥にはロフト式のような中二階があるようだ。ワンフロアーが田んぼほどの大きさ一反(いったん)ぐらいはある広々とした空間。    一階には床には、色合いに味があるテラコッタタイルがぎっしりと敷かれ、その上にはイタリアンブランドのアンティーク調家具や照明器具、お洒落な置物、エレガントなシステムキッチンがセンスのよく配置されている。しかし、家電はすべて日本製のようだ。  中二階はベッドルームなのか、テニスコートぐらいのハンモックのような網が吊り下げられている。恐らく絡新婦の巣、彼女達のベッドルームだろう。馬の(ひずめ)のように見えることから蹄形円網とも呼ばれているらしい。  こんな豪華の家に住める華糸と音糸は筋金入りのお嬢様だ。華糸は女優のように内面から溢れでる魅力があり、音糸は北欧の血が濃いいのか、西洋人形のような派手な顔立ちだ。どちらもベッピンさんにはかわりは無いのだけれど。  豪華なソファーの上に寝かされている紫音の前で華糸と音糸が心配そうに声を揃えて語りかける。 「紫音さん、大丈夫ですか?」  二卵性の双子。顔はあまり似ていないが、考え方や話し方はよく似ているようだ。   「もう大丈夫や、助けてくれてありがとう。でももう行かな……」  紫音は、目を覚まし上半身だけ起き上がる。 「先ほどの鬼女達が心配なのですか?」 「それもあるけど、一体何が起こってるのか知りたくて…それに、キィさんともちゃんと話ししなあかんし、自分の店も気になるしな…」 「もう少し、休んでいけば良いのに…」 「そういう訳にはいかへんわ。せやけどどっから上にあがったらええんやろ? 地下に落ちたんは知ってるんやけど。──でも地面の下にこんな空間があってんな、ほんまビックリやわ」 「困りましたね、叔母さまから多分、紫音さんを外に出したらダメだって言われると思うし……」 「そうなんや。せやけど、そこを何とかならへんかな?」 「いいじゃない華糸、将来私たちの夫になるかもしれない方の頼みなんだから」 「エッ!? 夫? どういうこと?」  音糸が発した言葉に紫音が目を丸くする。 「あ~気にしない気にしない、おっとどっこいというか何というか……アハハハ。とりあえずそうね、紫音さんをどうしたら地上に上がらせれるかしら……う~ん、でもね、出入口はすべて監視されてると思うし」  華糸は、音糸がパッと口走った言葉を必至で誤魔化そうとする。   「あっ、そうだ螺糸(ライト)兄弟に頼めばいいんじゃない? ちょっと待ってね」  そんなとき、ハッと適任者を思いついた音糸が明るい表情を浮かべると、スマホを取り出し電話をしだした。
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