予期せぬ奇襲

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 紫音が部屋の電気をつけると、七海の(まぶた)と頬が赤く腫れ、アイラインが滲みパンダのような目に。それに頬には涙がこぼれた筋が幾本も。  怒りが収まらない紫音は巨漢男の顔面を皮靴で蹴り飛ばし、そのまま足でゴリゴリと押さえつけて踏みにじる。    無意識に紫音の足首を掴む巨漢男。  紫音は構わず足を目一杯振り上げ、ゴン! ゴン! と押し潰すように何度も何度も打ちつけた。  すでに気を失っている男の顔は、みるみるうちに変形していく。  そこへ空の結界術で紫音の気を追ってきた鬼隈達が部屋に飛び込んでくるなり止めに入る。 「もうええ紫音、やめろ! これ以上やったら死んでまうぞ」 「どけ! 絶対にこいつだけは許さんのじゃ! 放せ!」  我を忘れ、怒りを爆発させる紫音。ガタイのいい鬼隈と小鬼の三郎太がニ人がかりで、巨漢男の相田(あいだ)から必死に引き離す。  それからすぐに、鬼隈は銃で撃れた紫音と怪我を負った七海を下で待たせてあるミニバンに乗せ、オロジャッジグループの息のかかった病院に連れて行く。  小鬼の三郎太は、巨漢男の相田を軽々と片手で担ぎ上げ、もう一台のワンボックス車の荷台に投げ入れると、このホテルの責任者を呼び出し通報しないように現金を渡し話をつける。しばらくして、事件のあった部屋ではオロジャッジグループの掃除屋と建築屋が何事も無かったようにするためキレイに片付けリペアーしている。その裏では、斎藤もここのラブホテルの経営者と電話で話し、大事にならないように交渉する。元々、安井のホテル街も梅龍会のシマ。警察沙汰にならず難無く収まった様だ。 「すまない。 俺のせいでこんな目にあわせて」  車の中で落ち着きを取り戻した紫音は七海を優しく抱きしめた。
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