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病院に着くとすぐに医師と看護師が出迎え、ニ人は診察室に連れられた。
七海は顔や全身の打撲痕、擦過傷を手当てしてもらってから膣や子宮内部を綺麗に洗浄される。その後、医師から七十二時間以内に飲むと有効とされるアフターピルを処方してもらったようだ。
片や紫音は、ストレッチャーに載せられ集中治療室に運ばれる。その後、弾丸摘出の緊急手術が行われた。
肩に被弾した弾は貫通しており、脇腹に被弾した弾は肋骨に当たり体内に留まっていた模様。
医師がレントゲンを撮ると、被弾した箇所は骨が砕けていた痕が残っていた。だが、なぜか既に骨が集まりくっつきだしている。
銃弾が当たり複雑骨折している肋骨部分。レントゲン上では、白く濁り新鮮な骨折の痕が確認できるのだが、なぜかバラバラに砕けた骨が元あった位置に収まっていた。
「赤城先生、この画像どう思います?」
若い医師がベテラン医師にセカンドオピニオンを求めた。
「う~ん、これは理解に苦しむな。とりあえず先に弾を摘出しないとな。悩むのはそれからにしよう」
被弾して複雑骨折した肋骨がもうすでに治ろうとしている。それに、不思議と肩に銃弾した射入口と射出口は既に塞がってきており、ベテラン医師の赤城が困惑したような顔で手術室に向かう。
その後、赤城医師によって弾丸がすぐに摘出され、消毒した後に縫合し無事手術が終了したようだ。
手術が終わり、担当医から最低でも一晩入院をするよう勧められるが、紫音は店のことが気になるのと七海と一緒に居てやりたいとういう気持ちにも重なり、七海を連れて強引に病院を出た。
「七海、大丈夫か? ほんま俺のせいで…すまない」
紫音は薄っすらと涙を浮かべながら七海を心から心配し謝罪する。
「いいよ。真っ先に助けに来てくれたんだから。もう謝らないで」
「ほんまにスマン許してくれ」
「だから、もう謝らないでよ。紫音こそ大丈夫なの? 撃たれてたでしょ」
顔中ガーゼだらけの七海は、アフターピルの副作用もあり、あまり気分が優れない様子。
「大丈夫、俺は頑丈にできてるし。それより今日は七海の家で俺が看病するしな。なんでも言えや。お腹減ってないか? なんか飲み物でも飲むか?」
「なんか、メッチャ気持ち悪い」
「どこが気持ち悪いんや? 吐き気がするんか? 頭、痛いんか?」
「違う! 紫音が気持ち悪いって言ってるの」
普段、紫音に優しい言葉など、かけられたことがない七海は変にくすぐったい心持ちになっていた。
「うっ、そうなんか……。なんかごめん──とりあえず、このタクシーに乗ろう」
紫音は傷を負った身体と傷心の七海を気遣うが、どうして癒してやれば良いのか、どうしたら元気になるのかが、まったくと言っていいほどわからない。
(俺が、七海に無理やり客をとらせたせいで、こんなことに……、梅田を甘く見てた。ほんま脇が甘かった。もっと細心の注意を払うべきやった。凛と遊んでる場合やなかったのにな……七海、ほんますまない……)
心の中で七海に謝罪する紫音は、沈んだ面持ちで七海と一緒にいてやることしかできない自分に腹立たしさを感じていた。
それと気になることがもう一つ。紫音は、おもむろにスマホをポケットから取り出した。
スマホを開けると、店長浩から「女の子と従業員すべて無事です。七海さんは大丈夫でしたか?」とメールが届いていた。
そのことに安堵した紫音は、七海の無事を伝え、店の営業状態がどうなってるのか返信する。
けれども、その頃、浩は警察や消防の対応に追われ営業どころではなかったったようだ。
スタッフは皆、申し合わしたように梅田との揉め事を警察には、一切話さなかった。
理由はどうであれ、暴力団との関係があるのは好ましくないからだ。
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