それは近々来る未来

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ー会計sideー カタカタカタッ カタカタカタタッ 『......、ふぅ』 今日の分の仕事を終え、俺は息を吐いた。 「ん?櫂もう終わったのか?」 終わった俺に気付いたのか伊龍院が声をかけてきた。 『ああ』 「「えぇ!かっちゃんもう終わったのー?いいないいなー。僕たちのも手伝ってよ~」」 「え、ずる~い。俺のも手伝って~」 「もう終わったのですか。今日はいつにもまして早いですね。そこの双子とチャラ男はいつも手伝ってもらってるのですから今日は自分でやりなさい」 「え~」 「「やだやだ~」」 「二倍に増やしましょうか?」 駄々をこねた三人に四季が背後に黒い靄を背負いながら笑顔で問いかけた。 「「「いえいえっ!今すぐやりまーす」」」 流石腹ぐr、 「櫂?今何を思いましたか?」 『いやっ、何でもない』 「ならいいのですが。今日はやく終わったのでしたらもう帰って結構ですよ。あなたはいつも人より多い量をやっているのですからたまには休んでください」 『了解した。ではまた明日』 「「かっちゃんまたね~」」 「かーくんまた明日~」 「ん、ま、、した」 「あぁ、櫂また明日ね」 「さようなら」 「また明日な」 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 四季に言われて早めに帰ったはいいがやることがなくて落ち着かない。 そういえば朝比奈が気分転換に外歩くといいといっていたな。試してみるとするか。 カコーンッ、、カコーンッ、、 いつのまにか竹林まで来ていたようだった。水の流れる音に時折鳴る鹿威し(ししおどし)の音が心地よく、仕事で疲れていた心身が癒された。 鹿威しの音を頼りに竹林を少し歩くと竹が少なくなってきた。もう少し奥まで進むと日本庭園が見えた。こんな場所が学園に会ったのかと思いつつ、和石をじゃりじゃりと踏み鳴らしながら庭園を歩いていた。 茶室を見つけ、襖が開いているのを見て誰か人がいるのだと気が付いた。茶道部の生徒だろうか。気になり茶室に向かって歩いて行った。 襖の前まで辿り着くと、中には着物を着た美丈夫がお茶を点てていた。 「ここに人が来るのは珍しいな。立っているのもなんだし上がって茶でも飲んでけ」 『あ、ああ』 そういって男はもう一杯お茶を点て始めた。家絡みで招待された茶道の家の先生よりも所作が良くて驚いた。 「どうぞ」 『ありがとう』 俺は振る舞い方に気を付けながらお茶を飲んだ。 「そこまで気を張るな」 呆れたように笑いながら言われ俺は張りつめていた気を解いた。 途端に茶の香りと味わいが感じられ 『美味い』 自然にそう呟いていた 「そうか」 嬉しそうに目の前の男は言った。 「さっきから男、男と、まあ自己紹介していない俺も悪いが。俺の名前は北条(ほうじょう)義彦(よしひこ)だ。よろしくな生徒会会計様?」 ニヤリと揶揄うように役職名で言われた。普段なら気分を害するのに不思議とこの男には腹立たなかった。 『櫂でいい。よろしく北条』 「こっちも名前呼びでいいんだぜ?」 『本名か生徒名で名乗ってくれたら呼ぶことにする』 「当初の予想通り櫂は侮れないな。まあ空気読めるだろうし時と場所を考えて呼ぶんだぜ?」 『約束は出来んが生徒会のやつらが怒ったところで何もできんし四月一日は普通に呼ぶと思うぞ?』 「それもそうだな。お、そろそろ戻らねえと暗くて帰れなくなるぜ」 『そうだな、またな』 「ああまた」 北条は手を振った俺に振り返してきた。またとは言ったが、俺の予想通りならアイツだろう。風紀の書類は近藤か四月一日が行ってたな。次からは俺も行ってみるか。公の場だと喋れるかもわからんしな ‐会計(一条(いちじょう) (かい))side end‐
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