51人が本棚に入れています
本棚に追加
「ねぇ?」
「ん?」
「もっと早く出逢いたかった……」
ただただ、その言葉が口からこぼれた……
素直にそう思った。
こんなにも近くにいたのに、どうして今頃になってあたし達は出逢ってしまったのだろうか。
「そしたら俺、離さねぇ~のによ~」と、あたしをおもいきり抱きしめた。
そっと飛翔くんの背中に腕を回しながら、あたしは小さくため息を吐いた。
そう、決してあたし達の関係は幸せなんかじゃない。
一緒に居られるこのひとときでさえも、ずっと着いてくる不安や苦しみ……
それは消えることはない。
飛翔くんが肩を震わせているのに気が付くと、あたしは目から零れそうなものを必死にこらえた。
そう……
あたし達は気づき始めていたんだ
お互いが贅沢になっていることを……
それが男と女であり人間だということを……。
最初のコメントを投稿しよう!