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「そうだ!伊織ーあの曲歌って??」 「あの曲って?」 店へ入るなり、ボーイに最近ギリギリに出勤してくるね、なんて言われたかと思えば、指名客来てるからすぐ行くよー!なんてせかされて すぐに常連のてっちゃんの席に座ったかと思えば、いきなりカラオケを歌ってくれ!なんて言われる始末。 この世界にいると、やっぱり、さっきまでの出来事が夢だったんだろうと錯覚を起こしてしまう。 「前に歌ってくれた、俺が気に入った!って言ってたやつだよぉ~」 「……」 「もしかして、その時の会話忘れた??」 「覚えているよぉ!!分かった」 ボーイを呼び、歌う曲を告げるとあたしは肩を落とす。 その曲は、いつも飛翔くんの車の中で聞いている二人が好きな曲で、同じにしている着信音だ。 せめて夢だと錯覚を起こしてるままで、仕事をしていたいと思ってしまってるのに…… せめて今だけは忘れていたのに…… 仕事中は、飛翔くんの存在を片隅に押し込めることに精いっぱいだったりするのに。 「そう、そう!これだよ!!」 イントロが流れ始めると、隣に座っているてっちゃんが嬉しそうに画面を見つめている。 マイクを手に取ると、一生懸命笑って見せた。 『流奈と俺みたいだなぁ~』 『うん!!流奈もそう思ったぁ~』 あたしは、画面に集中しようと一生懸命なのに飛翔くんと一緒にいる時の光景が頭を駆け巡る。 『でも、ちげ~なぁ…流奈こんなに素直じゃねぇ~な』 『え~っ!!そんなことないよ、飛翔くんには素直になんでも言えるもん』 歌っている途中に、一緒に聞いていた時の会話が浮かんでは消える。 飛翔くんl…… どこにいても、 何をしていても、あたしの頭の中からあなたが離れなくて 少しだけでも、忘れたいとこうして思っている自分もいる。 自分がこれ以上、傷つくのを恐れて……
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