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「飛翔くん……どして?」
「座れば?」
どのくらい、このテーブルの前に突っ立っていたのであろう。
飛翔くんの隣に腰を下ろすことさえも忘れるくらい冷やかな視線はあたしの平常心を簡単に奪っていく。
我に返りながら、ボーイの方に目をやると、心配そうな表情で、あたしを見つめている。
いけない……
今は仕事中なんだ……
「なんでそんなに飲んだの……」
静かに飛翔くんの隣に腰を下ろすと、少しだけ顔を近づけては耳元で囁いた。
その答えは自分が1番よく分かっているはずなのに、あたしの口から出た言葉は状況を選びはしなかった。
さっきまでの飛翔くんはもうそこにはいない。
そしてきっと、飛翔くんの瞳に映っているあたしもそうなのだろう。
「随分、楽しそうじゃん」
一緒のテーブルに着いている女の子が不思議そうにあたしと飛翔くんを交互に見ている。
きっと、こんなあたしを見るのも初めてだからであろう……
「伊織ちゃんだよね?俺、中西」
その笑顔は、あたしに少しだけ安心感を与えてくれた。
「あっ、はじめまして」
飛翔くんの親友、いつも話に出てくる中西くんは聞いている通り、優しそうな男の人だった。
彼のその一言で少しだけ張りつめていたものがなくなったが、あたしはずっと横から飛翔くんの冷たい視線を感じ、背後からの視線も感じていた。
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