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飛翔くんが横を向いている、その行動はあたしを視界に入れているような気がした。 長く目を閉じ深呼吸と共に目を開けると「違うよ…んな訳ないじゃん」と、空けられた大貫さんのグラスに丁寧にお酒を注ぐとニコっと笑ってみせた。 そう偽物のこの空間で本物などいらない…… ここにいる伊織はあたしではない。 「やだなぁ…」 そう言いながらも、それから飛翔くんの背中を見つめる事が出来なかった。 「良かった、仲良かったしあの男の目は伊織を凄く愛しているように見えたから」 そう言いながら飛翔くんの方を睨んでいるかのように見えた大貫さんの目から咄嗟に視線を反らした。 「殺してしまうかもしれない」 「えっ!?」 「伊織を取られたら……なんてね」 うそうそ!!なんて声に出して笑いあたしの肩を叩いたが、目は笑ってなんかなく、叩かれた肩に痛みを感じた。 「でも、もし伊織に大切な人がいて、その人に害を与える人や傷付ける人がいたとしたら…」 止まらない… まるで自分では、それをコントロールできない位に……。 「伊織も許さないと思う」 「なんてね」そう大貫さんに笑ったあたしの顔はどう映っていたのだろう 驚きを隠せないような、その大貫さんの姿に、あたしの顔は緩んでいるのが分かった。 そう、彼氏だと言えなかった あたしはどこかでそう大貫さんに言うのが精いっぱいで、それでも、遠回しにでも飛翔くんの存在を否定したくはなかった。
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