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いなくなってしまえばいい この世界に飛翔くんとあたし以外みんな そしてたらきっと、こうして無理に笑うことも 誰かを傷つけることも 憎しみ合うことも そして あたしはずっと、飛翔くんの隣で笑っていられるのだろう だから皆、消えてしまえばいい…… 「今日も、伊織に逢えてよかった」 店のラストソングが流れる中で、あたしの手をそっと握り顔を近づけてくる大貫さんを上手く交わし「ありがと」そう呟きながら飛翔くんの方をちらっと確認した。 大貫さんの手に力が入っていて、なかなか放そうとしない。 飛翔くんの視線を気にしながら、上手く放そうとするがまた握りしめられる。 嫌だ…… 前のあたしなら、平気な顔しながら笑顔で笑いすんなりと、放せたはずなのに…… 握られている手だけに全神経が集中して気持ち悪くなっていく。 飛翔くんに触れられた場所に、触れないでほしい…… 「なんだか、伊織変わったよ」 振り払われたかのように思えたあたしの手…… 放れた瞬間に、わざと仕事を探し必死に手を動かした。 「今日は帰る、男作らないでね」その捨てゼリフの後、立ち上がると いつも同様、鋭い視線であたしを見下ろし不気味な笑顔を浮かべながら最後に飛翔くんの方を見た。 全身に鳥肌がたっていく…… いつもみたいに「作るわけないじゃん」なんて冗談でも出てこない自分がいた。 その時、飛翔くんが後を振り向いた。 あたしはすぐに何もなかったかのように笑うと、大貫さんの後につづいて、深く頭を下げて見送った。 大貫さんが帰る姿を最後まで確認しなきゃいけない。 この人は本当に何をするか分からない…… 近くでタクシーを停めようとしながら手を挙げてる大貫さんを見たあと、全身の力が抜けてその場に座り込んだ。
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