*****

18/41
前へ
/380ページ
次へ
「伊織ちゃん大丈夫?」 いきなり声をかけられ、ビクッと体が反応するとそこにはボーイが心配そうな顔をしていた。 「うん、平気だよ!少し飲みすぎたかな」 お客さんが全て帰るまで仕事なんだ そう、自分で気合いを入れ直しながら店の中に入ると、飛翔くんと中西くんが立ちあがる姿が目に入り、近づいてくる飛翔くん達に「ありがとうございました」と笑いながら見送った。 飛翔くんの酔っぱらっている姿は初めて見る。 足元がフラフラで、よろけている。 中西くんまでも…… その姿に、また胸に痛みが走り帰っていく後ろ姿をじっと見つめて、その姿が消えると一気に不安が押し寄せてきた。 きっと、あたしの仕事姿が気になり再びこの空間に足を運んだのであろう。 踏み入れるまでは、不安や葛藤があったはずなのに…… 唇を噛みしめると、携帯を手に取り、慌ててメールを打ち込んだ。 《何処にいるの?大丈夫なの?》 もしかしたら、仕事している姿を見て嫌われたかもしれない。 冷めてしまったかもしれない。 不安だけが押し寄せる中で、携帯を見つめてそこから離れられないあたしがいる。 逢いたい…… 逢って抱きしめて欲しい、壊れてしまうくらいに……。
/380ページ

最初のコメントを投稿しよう!

52人が本棚に入れています
本棚に追加