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「伊織ちゃん大丈夫?」
いきなり声をかけられ、ビクッと体が反応するとそこにはボーイが心配そうな顔をしていた。
「うん、平気だよ!少し飲みすぎたかな」
お客さんが全て帰るまで仕事なんだ
そう、自分で気合いを入れ直しながら店の中に入ると、飛翔くんと中西くんが立ちあがる姿が目に入り、近づいてくる飛翔くん達に「ありがとうございました」と笑いながら見送った。
飛翔くんの酔っぱらっている姿は初めて見る。
足元がフラフラで、よろけている。
中西くんまでも……
その姿に、また胸に痛みが走り帰っていく後ろ姿をじっと見つめて、その姿が消えると一気に不安が押し寄せてきた。
きっと、あたしの仕事姿が気になり再びこの空間に足を運んだのであろう。
踏み入れるまでは、不安や葛藤があったはずなのに……
唇を噛みしめると、携帯を手に取り、慌ててメールを打ち込んだ。
《何処にいるの?大丈夫なの?》
もしかしたら、仕事している姿を見て嫌われたかもしれない。
冷めてしまったかもしれない。
不安だけが押し寄せる中で、携帯を見つめてそこから離れられないあたしがいる。
逢いたい……
逢って抱きしめて欲しい、壊れてしまうくらいに……。
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