魔法の使い方

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「あ、これは豊作だ。枝毎落ちてきた」 「失敗?」 「まさか。君の魔法のおかげで、沢山の木の実が食べられる。ほら、もう手の届く位置に木の実がある。枝からもいで、好きなだけ食べると良い」 「兄さんは食べないの?」 「食べるよ? だけど、それを落としたのは君だ。それに見ていてごらん、僕は僕で一番美味しい木の実を落として食べるから」 「うん」 「風の精霊よ、我に力を貸したまえ……」  兄の魔法で、木の実だけが地面に落ちた。兄は落ちた木の実を拾い上げ、付いた砂を吹いて払う。 「凄い! ちゃんと木の実だけ落ちて来た!」 「そうだね。僕は、ずっとこうやって木の実を食べてきたから、使った魔法にも慣れているんだ。君も、何時かは出来るようになるよ」 「そう、かな?」 「出来るようになる。但し、それは練習してこそだよ? 先ずは木の実を外して食べちゃって? 僕は僕で、美味しそうなものを選んで食べるから」 「うん!」 ---------- 「もう、落とした枝に、残った木の実はない?」 「……と思う」 「じゃあ、さっき使った魔法を落とした枝にかけてみよう。今度は、粉々にする気持ちで」 「粉々に?」 「そう、粉々に。枝を落としたことが、あの二人にバレない為に」 「分かった!」  弟の使った魔法で枝は砕け散り、地面に広がった。枝だった物質は、何も知らぬ者から見れば細かい屑で、良く見なければ枝を砕いたものとは分からない。 「……初めてにしては上手だね。君は、細かい操作が必要な魔法より、派手な攻撃魔法が合っているのかも知れない」 「攻撃魔法が?」 「合っている可能性は高いと思うよ。それに、小さいうちは、出来ない事より、やりやすいことからやる方が楽しいし覚えやすい。そうだ、粉々にした枝、強い風で吹き飛ばしてみようか?」 「うん!」  砕かれた枝は宙を舞い、兄弟の近くからは消えて無くなった。
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