初めての◯◯

必要なお金の入手方法

「今日は、素材の買い取りをしてくれる人達に、君の顔を見せに行こう。いきなり君が店に行くより、僕が紹介しておく方が後で話が進みやすいだろうからね」
　話を聞いた弟は首を傾げ、兄は和やかに笑った。

「今までは、お金になる素材や肉は、僕だけが売りに行っていた。採取や狩りだけでは、手に入れられないものもあるからね。それらを買う為に、何かを売って、お金に換えておくんだ。お腹を満たすだけで生きていける動物とは違って、人間が人間として生きていくには、どうしたってお金が必要だから。服を一から作れるなら、それも変わるかも知れないけど……いや、そこまでは考えなくて良いかな」
　兄は弟の少し先を歩き、道を案内しながら話を続けた。

「知識を手に入れる為には、学校へ入るのが手っ取り早い。それぞれの専門知識を持った大人が集まっているからね。だけど、学校へ入るにも、学校へ通い続けるにも、沢山のお金が要る。その為のお金を貯めるのは大変だけど……それ以上に得られるものがあるのなら、賭けてみる価値はある」
　徐々に声を小さくしながら言葉を紡ぎ、兄は黙った。兄は黙ったまま道を歩き、その背中を弟は追い掛けた。