1人が本棚に入れています
本棚に追加
歩き続けた後、兄弟は露店の並ぶ区域に出た。兄は、顔なじみの露店商に挨拶をしながら、売れる物を次々に換金していった。
そうしながら、兄は商人と弟を知り合わせ、時間をかけて露店を回った。素材によって売る店は変わり、兄は挨拶と弟の紹介だけで済ます時もあった。
露店が並ぶ区域から少し離れると、そこにはこじんまりとした建物が在った。その建物の正面には窓は無く、堅木で作られたドアは重々しい雰囲気を出している。
また、建物の外壁に苔に覆われ、濃緑色の蔓がひしめき合って天を目指していた。兄は、弟に店の外で待つように言い残し、一人で小さな店に入った。
兄は、十数分は店に滞在し、それから弟の元に戻った。弟が見る限り、兄の所持品に変化は無かった。だが、兄の表情は満足そうで、それを見た弟は安心した様子で息を吐く。
「さあ、近場では手に入らない物を買って帰ろうか。調味料やナイフは、何時もの場所からは手に入れられないからね」
兄は目を瞑り、立ったまま何かを考えた。
「ナイフはまだ使えるけど、残っている調味料は……」
そう呟いてから兄は目を開き、弟を見下ろした。弟が着ている服は所々が破れ、丈が足りていない部分もあった。
「君の新しい服も買おう。これからのことを考えて、大きめの服が良いね。子供服なら、使われなくなったものが安く売られているから、長く使えそうな予備も買っておこう」
兄は微笑み、露店が並ぶ区域に向かい始めた。その後、兄弟はささやかな買い物を楽しみ、帰路につく。
最初のコメントを投稿しよう!