兄弟の別れと呪い

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「とうとう、明日が僕の入学式だ。だから、もう言い残すことは無いよね? 一月前から、居なくなることは伝えていたから」  兄の問いに弟は肯き、微笑んで見せた。 「これから、君が学校に入学する迄の間、僕達は会うことが出来ない。だから、旅立つ前にこれをあげよう」   兄は、中心部に紫色の宝石をはめ、繊細な細工がなされたネックレスを弟に見せた。そのネックレスは銀のチェーンによって弟の首に掛けられ、兄は満足そうな表情を浮かべる。  一方、弟はネックレスに吊された宝石をつまみ、良く見ようと目線の高さまで上げた。すると、その宝石は太陽光によって色を変え、繊細な細工がその光を増幅する。 「それはお守り。暗い道でも君が進むべき道を示してくれるし、そのお守りに強く願えば、僕は君の元に飛んでくるだろう」  弟は、兄から貰ったお守りを大切そうに両手で包み込んだ。すると、柔らかな菫色の光が、手や指の隙間からこぼれ落ちる。 「だから、大切に持っていて欲しい。誰にも見つからない様に大切にしておいて欲しい。そのお守りだけが、離れて暮らす間の、僕達を繋ぐ唯一のものだから」  兄は弟を抱き締め、そのまま弟の後頭部を撫でた。それから、兄は身支度を済ませ、弟の元から旅立った。
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