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魔法の使い方
「この年にもなって、まだ兆候が見られないなんて」
「コイツは、とんだ失敗作だな」
「甘やかし過ぎたんじゃないか?」
「まさか! 食事も教育も××××と変わらないものを与えたのに!」
「見た目だけは、××××とそっくりだと言うのにな。魔法の才能だけがまるで違う」
大人達が言い争う中、年端のいかない兄弟は身を寄せ合っていた。兄は弟の肩に右手を乗せ、その刺激で弟は顔を上げる。
「外に行こうか? 今日はとっても天気が良い」
「そうだね。外の方が気持ちも良さそう」
兄弟は連れ添いながら家の外に出た。屋外は暖かく、大人達の声は聞こえてこない。
「ほら、庭の木の実、もう食べられそうだ。毎年、この木には美味しい実が生るけど、ああやって生産性のない話ばかりする二人は気付いた事がない。あの二人はね、自分達が気持ち良くなれることしか見ていないんだよ?」
「そうなの?」
「そうだよ。だから、自分達のせいで息子の可能性を潰している事に気付かない。魔法って言うのは、生まれ付いての魔力がなければどうにもならない。だけど、魔力を持って生まれたなら、やりたい事があって、その目的に向けてどんな魔法が必要か……その為に想像しやすい呪文があるけど、そう言うのは学校で学ぶことだから」
「じゃあ、学校に行けば僕も……」
「そうだね。魔力持ちなら、きっと基本的な魔法が使える様になる。だけど……良いかい? あの木の実を見て?」
「うん」
「木の実って、木の枝からぶら下がっているでしょ? その根元の部分を切り離したら、落ちてくると思わない?」
「そうだね」
「じゃあ、実際にやってみようか」
「えっ?」
「ほら、どれでも良いから木の実を見て?」
「う、うん」
「そうしたら、木の枝から木の実に伸びる部分を、風で切り裂く想像をする」
「うん」
「そうだな、冬に見られるつむじ風を思い出そうか。あれの小さい……」
弟の魔法で風が巻き起こり、太い枝毎木の実は落ちた。それは兄弟の前に落ち、幾らかの砂を巻き上げた。
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