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ひらひらと、桜の花びらのように舞い落ちてくるのは、色とりどりの紙たちだった。止まることなく落ちてくる手のひらほどの大きさのそれは、地面を覆い隠すほどに降りつもっている。
「ど・れ・に・し・よ・う・か・な」
ご機嫌に口ずさみながら指を動かしているのは、七歳くらい人間の女の子の容姿をしたネネだ。つい数日までは、空を飛びたいという理由で真っ白なハトの姿をしていた。使い勝手のいい人間の姿だけを、もう何百年も続けている自分とは大きな違いだ。
「て・ん・の・か・み・さ・ま・の・い・う・と・お・り」
自分自身がその「神」であるというのにも関わらず、ネネは人間が作ったこの歌を気に入っていた。歌が終わったところで止まった指が、一枚の黄色い紙を拾い上げた。
「うげぇ、見てよシン」
ネネが眉間にしわを寄せながら、手を伸ばしてきた。そこに書かれていた文字を見て思わずため息がもれる。
「働かずに金持ちになりたい、ねぇ」
「最近こんな願いばっかり多すぎ。勝手に湧いてくるものなんて、温泉か石油くらいだっつうの。人間って頭いいくせに、めちゃくちゃ単純なことに気づかないやつ多いのはなんで?」
「気付けないくらいに毎日生きるのに必死なんだよ」
「ふぅん」
ネネはふっと息をかけて、その願いを吹き飛ばした。数えきれないほどの紙にまぎれたそれは、もう二度と我々の目につくことはないだろう。
「お、この人は謙虚な願い事だなぁ」
代わりに拾った願いを見ながらネネは呟いた。それから、こちらを見上げて唐突に聞いてきた。
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