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悪魔との出会い
「……?」
身体が鉛のように重く、意識が朦朧としている。
視点の定まらない目で辺りを見回すと、柔らかな白いシーツの上に寝かされているようだった。
身体を起こしたくても、手首が何かに固定されているようで、うまく力が入らない。
「……っ」
恐る恐る目を開けると、手首にうねうねと黒い靄が巻き付いている。
ここはどこなの?
この黒い靄はなに?
状況を理解しようと頭を働かせているうちに、言いようのない大きな不安が押し寄せてくる。
英司、怖いよ……。
喉の奥が、何かが張りついているように痛く、助けを求める声は誰にも届かない。
そんな私をあざ笑うかのように、私を拘束している黒い靄がグニャリと揺らぎ始めた。
その靄はまるで意思を持っているように、一つの塊になり、やがて人型のシルエットになった。
人間のような黒い影。
一体何が起こっているのかわからなくて呆然としていると、人型になった影が音もなく私に近づいてきた。
180センチを軽く超えている長身の影。
目で見えるのは、そのシルエットだけ。
「……ひ、っ」
嫌、こっちに来ないで。
助けて、英司、助けて!
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