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私が高校生の時に亡くなった母の座右の銘は『芸は身を助く』だった。
元々は母の母、つまり私にとっての祖母が心に留めていた戒めの言葉だったようだけれどそんな祖母の元、母は幼少の頃から洋裁を習い人に教えるほどの腕になった。
結果、シングルマザーとなってもその手に職があったことでさほど生活に困窮することはなかった。
『芸は身を助く』をまさに身を持って実感した母は私にも同じように手に職をつけさせようと躍起になった。が、私はどの習い事も長続きせず、ただの金食い虫になっただけだった。
そんな私が唯一嫌にならず飽きもしないで長く続けられたのは料理だった。
仕事で家を留守にすることが多かった母の代わりに家事の一切合切を任されていた私の一番好きな家事が料理だった。
元々食い意地が張っていたこともあるのか、美味しいものを食べるのが好き、自分が作ったものを人に食べさせるのが好き、尚且つ美味しいと言ってもらえたら幸せな気分になれることに気が付いた私の将来の夢は早々に決まってしまったのだ。
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