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「はぁぁぁ……やっぱりダメか」
携帯画面をスクロールしていた指を止め浅くため息を吐いた。
「いい処、なかったんですかぁ?」
「あー…うん。今は何処も厳しいみたい」
「そうですかぁ、大変ですね」
アルバイト先のファミレスの休憩時間に携帯で職探しをするのがすっかり日課になってしまっている私、杉原双葉は就職浪人の21歳。
春に調理師専門学校を卒業したけれど内定していた職場が経営不振から倒産してしまい一度も出社することなく無職になってしまった。
幸いにも就職のために辞めていた学生の時からアルバイトとして働いていたファミレスに継続して雇ってもらえたのでとりあえずお金の心配をすることはなかった。
(だけどそれも期限付きだよね)
唯一の肉親である母を既に亡くしている私に頼れる人はいない。これから先、自分ひとりで稼いで生きて行かなくてはいけないのだ。
だからこそアルバイトという不安定な雇用形態ではなくちゃんとした会社に就職しなければいけないというのに……。
「まぁ、でも大丈夫ですよ、双葉さん」
「何が大丈夫なの?」
「だって女は旦那さんに養ってもらえばOKじゃないですかぁ」
「……」
「このままアルバイト続けて頃合いになったら彼氏と結婚しちゃえば永久就職ですよ♡」
「……」
にこやかにそう言い放った彼女は女子高生バイトの芽衣ちゃん。
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