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滝川くんの焦点の合わない黒目がちな目を見ながら戸惑っていると突然大きな音が鳴り響いた。
聞き覚えのあるその爆音は滝川くんのお腹から鳴っていた。
「…えっと……もしかしてお腹、空いているの?」
「……はぁ」
(でしょうね!)
とんでもなく大きなお腹の音がしたのだから空いていないわけがない。
「何か食べた方がよくない?」
「……ですね」
「……」
よほど寝惚けているからなのか、先ほどからの受け答えが普段の滝川くんらしくなくて少し違和感を覚え始めた。
(いつも明るい滝川くんしか知らないからなんか変)
寝起きが悪い人というのはいるらしいからそういうことなのかなと思っていると更に滝川くんのお腹の音が大きくなった。
なんだかその音を聞いていると無性に何かを食べさせたい気になってしまい、私は持っていたバッグの中からランチボックスを取り出した。
「滝川くん、これ食べて」
「……え」
「私が作ったお弁当。よかったらどうぞ」
「……あ、いや」
私の差し出したお弁当箱をちらりと見てあからさまに戸惑いの表情を浮かべた。その一瞬の表情にやや怒れてしまったが憤慨よりも救済の気持ちが勝りより強く進めた。
「心配しなくても私、一応調理師免許持っているから超絶不味いってことはないから」
なんて言いたくもないことを付け加えた。すると滝川くんは何か思案するような仕草を見せてから口を開いた。
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