羽田で

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羽田で

元警察庁祓魔課のストラテジー おっさんと幼女の2人旅編 霊的防衛の見地から世界を俯瞰すると、冥王ハデスの存在は、日増しに威を増しているように思えた。 ハデスは遺憾ながら、我が国日本に住み着いた神であった訳だが、視点を神に移すと、世界には神の存在が散見しているようだった。 例えば、アメリカ合衆国を裏で動かしていた、造物主ヤハウェ。 何年か前にテロリストとしてハデスの馬鹿親子に滅ぼされていた。 中央アジアに巣食っていた病神パズス。世界中で空気感染する病を巻き起こしていて、一時ハデスですら病気に感染していた。 去年、ウィルス扱いされてハデスの馬鹿と元同小(おなしょう)の同級生によって滅ぼされていた。 更に、フェアリー・ランドと呼ばれる異世界に現れ、世界を滅ぼそうとしたスカディもいた。 やっぱりハデスの馬鹿と友人の異世界人(ジョナサン・エルネスト)によって完全に滅ぼされていた。 スカディの背後には、精神に寄生するストーカーめいた女神の姿があり、それはかつて、ハデスの馬鹿が人間だった頃にも存在していたことが解った。 その迷惑は、私も被っていた。 刀で斬られそうになった記憶があった。 そして今、ハデスの馬鹿は防衛大臣の地位についていた。 ハデスの馬鹿は、最近まで大人しくしていたようだ。 例のストーカーは、世界中に散らばっているようだった。 馬鹿の動きは早かった。同じように、過去、ストーカーの力の一端に触れていた、馬鹿の幼馴染みを、ストーカー撃滅に差し向けたのだった。 じゃあ、頼むぞ正男。一件片付ける度に褒美をやろう。左団扇を満喫するがいい。馬鹿はそう言った。 「まあ、ガキの頃のおばさんの恐怖は知ってるがよ。俺に判別付くのか?」 馬鹿の幼馴染み、INORIの銀正男氏は言い、馬鹿はこう応えた。 「それについちゃ問題ない。ストーカー根絶チームは、このブレインを得てまさに最強になった。ブレインを抱っこするがいい」 馬鹿は、娘を2人、抱っこ紐で抱えていた。 ハデスの娘達、最愛の三つ子の姿があった。 石榴と紫の姉と、確かもう1人。 テテテと近づいた赤子が、正男氏に向かって手を伸ばした。 正男氏は、三つ子の3人目、水色を抱っこする羽目になった。 「よし。じゃあ俺のプライベートジェットで出国しろ。お前は世界を救ったおっさんだ。全世界ほぼフリーパスだぞ?名目は演奏旅行ってことになっている。イギリスからEUを南下してアフリカに到達しろ。俺が島原と通った道だ」 ああ。確かに行った道だ。この馬鹿ともう1人の3人で。 「みっちゃん行ってらっしゃーい」 「みっちゃんお土産ー!ガンダムチョコねー!」 「うん。行ってくるー。パパ大しゅきー。ママも、にーにーも小にーにーも、ねーねーもりーねーねーもみんなしゅきー」 「もう可愛すぎて死にそうだ。気を付けろよ水色。お前に何かあったらヨーロッパは欠片も残さず消滅することになっている。正男諸共」 「ガンダムチョコなんかもう売ってねえだろうが。82、3年辺りの記憶全くないしなあ」 何だか、正男氏はすっかり馬鹿の扱いに慣れていたようだった。 正男氏が赤子と共にターミナルに消えたあと、俺は馬鹿に声をかけた。 「これからどうする?あの子がブレインだと?」 「ああ。真面目な話水色は凄いぞ?お前達は顔を会わせてないが。俺達の娘として遺憾なくストーカーを見つけ出すと信じている。真面目な話、俺はあんまり家から出られんのだ。あのストーカー、解ってやってるのか?俺が関わり合いから身を隠し、引きこもってる間に飛翔体は飛びまくり、アメリカはじり貧だし、ロシアはとっくに独立した旧連邦国土の上でNATOと睨み合うしなあ。俺を封じて何がしたいんだ?」 確かに世界は急激にキナ臭くなってきていた。 「正男と水色、それとあれに期待しよう」 あれって何だ?島原雪次はそう思い、同期の桜と並んで歩き出した。
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