血の雨地獄

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また“血の雨”が降ってきた。 最近多くて洗濯物も干せないし本当に困る。 ここは、地下の国。 わたしたちは地下の国に住まう地底人。 地上の人々からは、“モグラ”と呼ばれているけれど。 そりゃあ、地上の人々はまさかわたしたちの下半身は人間と同じなんて知る由もないのですから仕方ありません。 わたしたちは地下の国で平和に暮らしていたのですが、最近地上の人間たちが“センソウ”をしていて地下の国にまで被害が及ぶのです。 赤い鮮血が地上から降ってくるから皮肉も込めてわたしたちは“血の雨”と呼ぶのです。 本来は、雨は恵みでありがたいものですから。 雨のおかげで美味しいお紅茶が飲めるのに、地上の人間たちは愚かしくも昔から茶葉だったり利権だったり土地を巡って争うのです。 すべては、お前たち地上の人間たちが独占できるものじゃないのに。 神々より与えられた恵みで争うなんて馬鹿みたい。 そもそも自分たちの生活を豊かにしてくれるもので戦うなんて、なんて愚かなのでしょうか。 そんな愚かな人間たちのせいでわたしたちは不便な生活を強いられている。 血の雨のせいで洗濯物も干せないし、買い出しにも行けない、学校や会社に行けなくて困っている地底人も少なくありません。 白百合も紅く染まって醜く嘲笑うように狂い咲いています。 昨夜降り積もった雪で綺麗な銀世界が広がっていたのに、血の雨のせいで赤い斑点がまばらに散らばってしまいました。 美しかった地下の王国も人間共に侵略され、醜く血なまぐさいモグラの棲家にと成り下がった。 降り積もる血の雨からする鉄の匂いが充満する。 息が、苦しい。 前は、季節の花の香りが鼻を掠めていたのに。 返してください、わたしたちの王国を。 平和だったわたしたちの世界を、返してください。 わたしたちの叫び声すら小さな音となってセンシャの爆音にかき消されたのでした。
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