恐怖のおもてなし

5/5
前へ
/5ページ
次へ
 納期の関係でしばらく仕事が忙しく外食に行けなかった和也は四ヶ月ぶりに麺麺亭に来店した。  テレビの取材で盛り上がった頃ほどではないが、店内は大勢の客で賑わっている。  麺麺亭の窓から近くにあったレストランの方を見る。そこにはレストランの建物はなく、鬱蒼と繁る木しかなかった。 「あの店潰れたんだ」  たぶん最初で最後の客になっちゃったな。しんみりと水滴のつくグラスを傾ける。 「ご注文決まりましたら申し付けください」  水を一杯飲みきると、隣にグラスを置かれた。次々と増えるグラスに和也ははっとした。  顔を上げると、見覚えのある後ろ姿が遠ざかっていった。 「世知辛いなぁ」  和也は置かれたグラスの水を一気に飲み干した。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

21人が本棚に入れています
本棚に追加