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休日、無性にラーメンが食べたくなった社和也は贔屓にしている中華料理店・麺麺亭を目指してハンドルを握っていた。
「醤油にするか、それとも味噌にするか」
気分はすっかりラーメン。
頭の中ではいつも店内でかかっている謎のBGMが流れる。ラーメンの口になっていた。
驚いたことに、中華料理店に着いたものの、駐車場は県外ナンバーの車で埋め尽くされていた。
「そういえば、昨日テレビでこの店紹介してたっけ」
ついてないな。
麺麺亭は昨夜のテレビで特集されたため、地元と県外の客で溢れかえっていて満席状態だった。店の外で座り込んで待っている客も見える。
「これは短くても一時間待ちか……」
和也は車を店からUターンした。
飯に長時間も費やしたくない。
なかには並ぶのが好きという酔狂な人種もいるが、和也は違う。空いてる方がいいに決まってる。
「お、ここなんかガラガラだぞ」
麺麺亭の近くに見覚えのないレストランらしき建物があった。
この間ここへ来た時はなかった気がする。新しくオープンした店だろうか。
しかし、レストランの駐車場には車が全く入っていない。
一台だけワゴン車が隅に置いてあったが、位地からして従業員の車だろう。
麺麺亭は満員御礼だというのに、このレストランは閑古鳥が鳴いている。
「なんというか、不気味な外観だな」
店の周りを大きな木が何本も鬱蒼と囲んでいて、外の壁に蔦が何重にも這っている。レストランにしてはあまり入りたくない外観だ。
「まぁいいや、空いてるし。ここにしよう」
それよりも自分は空腹だった。もはや和也には空いている店が何より魅力的に映ってしまった。
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