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 それにしても、随分昭和な到着音である。  地底人というやつらはちょっと遅れてはいるようだが地上の情報に精通はしているようだ。  おそるおそる進み出た緑川の後に続き、村井もエレベーターの外に出る。  そこは赤い絨毯に覆われただだっぴろいホールだった。ただ、明かりは極端に少ない。  ロンドンのガス灯を思わせるような、ガラスに覆われたライトが広いホールの数か所にぽつ、ぽつとあり、オレンジ色がかった光をホールに広げている。 「これはまた、なんというか、レトロですね」  緑川がぽつり、と言ったときだった。エレベーターの出口と向かい合う形で設けられた両開きの黒い扉が静かに開き、一人の人物が姿を現した。  遠目なので顔はわからない。が、紋付袴を着ているように見える。頭にはちょんまげも見える。 「時代がしっちゃかめっちゃかだな」  ぼそりと言う村井のふくらはぎが激しく緑川に蹴られた。悶絶している間に顔が目視できるくらいの距離までその人物が近づいてきた・・・・。  なんじゃああ??  村井が場違いにもそう叫びそうになったのも無理はない。  やってきた人物の顔が真っ白だったからである。  いや、真っ白というか、肌の上になにかを、貼ってる・・・?
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