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2056年11月10日。
この日はおそらく、後世に残る日になるだろう。
防衛大臣、村井十三(じゅうぞう)はエレベーターのガラス壁に映る自身の姿を確認し、ネクタイを今一度締め直す。
「到着まであとどれくらいだ?」
「そうですね。あと35分です」
同じくガラス壁を眺め、秘書官の緑川が答える。
「長いな」
「これでも他国よりは高速です。某国では到着に2時間かかったそうですから」
「さすがに地の底、だな。それにしてもこんな地の底で生存できる人類とは一体どんな奴らなのか」
「確かに。音声でのやり取りしかこれまではできませんでしたしね。他国との会談の様子も完全にシークレットですし。
しかし彼らは我々地上人をはるかに超えた科学力を持っています。なんといっても地上と地下を結ぶエレベーター開発を成し遂げてしまうくらいですから」
「とはいえ、どれだけシークレットなんだ。会談は私ともう一人とだけしか許さないと言うし」
「他国の情報によれば、非常に友好的な者たちだと聞いています。ひとまずは彼らの様子を見ましょう」
「そうだな」
チーン!
高い音を立ててエレベーターが到着した。
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