第一章 表の斎王と裏の闇夜姫

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カーテンを閉めていない窓を見ると既に外は真っ暗で、パソコン横に置いてある時計の文字盤は夜の六時過ぎを示していた。 不意にドアをノックする音がして、男はどうぞと声をかける。 「やはりまだ居たんだね。 良かった、朝日奈君に折り入って話があるんだよ」 入ってきたのは髪の毛が六十%以上白髪、あとはグレー色になった朝日奈宏弥(ひろや)の恩師でありこの研究室の教授、林田だった。 この時期に折り入って話がある、もう内容の予想は付いていた。 本来ならとっくに終わっているはずの助手契約の更新が無かったからだ。 国から大学へ支出される研究費用は年々大幅に減らされ、特に国文学科への費用など恐ろしいほどに削られている。 まだ大学院を卒業して一年だが、まさかもう肩たたきにあうとは思わなかった。 だがこれが現実、仕方が無い。
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