日本買います

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 翌日の朝、渡研の5人は宮下が手配したボックスカーに乗って、東京西部の所有者の家を訪ねた。  豪勢な一戸建ての中に入ると、運送会社のスタッフが例の香炉を厳重に箱に梱包し終わったところだった。所有者らしいでっぷりと太った50代ぐらいのスーツ姿の男性が渡たちの側へずかずかと歩いて来た。 「あんたたちが追加の護衛だな? しっかり守ってくれよ。上海に着いて先方が首を縦に振れば、10億円になる商談なんだ。頼むぞ」  男がその場を去ると、筒井が口をとがらせて小声で言った。 「なによ、偉そうに。こっちはボランティアみたいなもんなのよ」  宮下が掌を前に出し、まあまあ、となだめる仕草をしながら言った。 「ここから羽田空港まで運んで、上海行きの便に積み込みます。飛行機が離陸すれば、さすがに怪人でも手出しはできないでしょう。それまであの香炉が奪われないようにするのが、私たちの役目です」  それから運送会社の車を2台の覆面パトカーが前後から挟み込む形で、香炉が運び出された。所有者の男は運送会社の車に同情し、渡研の車は後ろから続く。  北風の強い、今にも雪が降り出しそうな寒空の下、車列は高速道路に入って空港へ向かった。  空港の入り口の一つは既に制服警察官数人が警備しており、車列は地下駐車場に入る。覆面パトカーから降りた私服刑事に囲まれて、所有者の男と運送会社のスタッフが、香炉を入れた箱を運んでいく。  出発ゲートへ向かいながら、渡が小声で言った。 「これなら空港の中に入る事もできまい。一安心だな」  宮下もやや緊張が解けた表情で言った。 「空港の周りは密かに警察が包囲しています。さすがに手出しは出来なかったようですね」  同じころ、空港の管制塔の中では、管制官の一人が電話の受話器を耳にあてながら「はあ?」と大声を上げていた。 「その便なら5分後に着陸予定ですが……機体の上に人がいる? そんな馬鹿な」
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