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(Side:大堂)
可愛いがっていた後輩に任された兄は、高校を卒業しても何も変わらず。
見送りに来た友人達の不満の真意にも。
飛行機で寝ている姿を見知らぬ人間に盗撮されそうになっていたのにも。
CAがポケットに電話番号を入れようとしていたのにも。
空港で好奇の目を向けられていたのにも。
全くもって気がついていないのだろう。
ここまでくると、本当に罪レベルである。
「あなたも、随分と苦労してるようね。心中察するわ」
皇の叔母はどうやら鼻が効くらしい。
皇本人に悟られない程度にサラッと流せば、当の叔母様は突然大きな声で笑い始めた。
めちゃくちゃ目立ってるけど…。
でも、この人は甥っ子に不利になることは決してしない。
時折垣間見える彼女のその優しい表情が、きっとそう思わせるのだろう。
その優しい表情にはどこか見覚えがあって。
いつの日かの頼もしい大人の存在を思い出す。
血は争えないな。
良い意味でも、悪い意味でも。
「そうそう、多分あなた、まだまだ脈はあるわよ。頑張りなさい」
皇とのツーショットを取り終えた直後、こちらに寄ってきて今度は何かと思えば、またそんなことをコソッと言われた。
その言葉に眉を推定3mmほど上げる。
何を根拠に…
「腐女子の勘。We leave our prince to you, Mr. Knight. [王子を頼んだわよ、騎士さん]」
その発音は日本人が第二外国語として習得したとは思えないほど綺麗だった。
学園では王だ何だと呼ばれていても、彼女たち親族にとってはいつまでも護るべき王子なのだな、と心がホッコリとした。
「Of course.[もちろん]」
彼女がその部分だけ英語で言ったのに対し、同じように英語で短く返す。
返事に納得したのか、フッと笑みを浮かべると何事もなかったかのように、そそくさとその場を去っていった。
嵐の様な人だったな、と忘れられない思い出になったのは言うまでもない。
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