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「……ーー、ォリ……、てるの?」
遠くで声が聞こえたような気がした。
部屋の片付けをしていたはずが、いつの間にか寝ていたらしい。
声が聞こえたということは、意識は少しずつ覚醒しているようだが、いかんせん、瞼が重い。
時差ボケもきっとその理由の一つなのだろう。
[イオリ、、、ーーーーー?]
部屋では日本語で話そうと意気込んでいた彼が発した言葉は、最初に話していた訛りの強い英語で、名前以外聞き取れなかったが、先程の声よりも大分近くから聞こえたその声に、彼が部屋へと入って来て、近くにいるのだと伺える。
「ご、めん……、アル……。寝起きで、聞き取れな、かった……。なんて……?」
開けたくない目を擦りながら上体を上げ問うが、返事は返ってこない。
あれ?
「ーーーッ!」
寝ぼけていたのか、と擦っていた目をなんとか開き、パチパチと状況を確認すると、思ったよりも近くにアルの綺麗な瞳と端正な顔があってびっくりし、反射的に体を引いてしまった。
「ねてるイオリも、ねおきのイオリもカワイイね」
スッと伸びて来た手が、開いたばかりの目を撫でる。
「ごめん、アル。何か用だった?」
特に抵抗もせず要件を問うたのだが、目が合った彼は何も答えることなく。
それも一瞬。
予想だにしなかった動きだったのと、寝起きで頭が働いていないという事もあり、反応が遅れた。
「……、ん」
その衝撃から、触れるだけ触れてすぐに離れた唇を目で追ってしまった。
[そんなに見つめないで。我慢できなくなっちゃう]
今度は聞き取れたその言葉に、意味も意図もわからず目を瞬かせれば、再び端正な顔が近づいて来た。
今度こそは、と彼の口元を抑えようとした手を取られ、最終手段として、出来るだけ距離を取るためにベッドに背を沈めたが、逆効果。
彼は捕らえた手をベッドに縫い付け、上から俺に覆い被さった。
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