Prologue

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「「「聞いてない!」」」 ある程度の荷物は既に送ってあるため、そんな大荷物もなく。 手荷物だけを持って搭乗手続きを行っていると、後ろからそんな大声が聞こえてきた。 いや、迷惑だから。 ここ、公共の場。 わかる? そういった気持ちを込めて振り向けば、三者三様な顔がそこに揃っていた。 「何をだ」 確かに、留学する話も今日発つ話もしてあったはずだ。 だからこうして空港(ここ)にいるのだろう。 「なんでソイツも一緒なわけぇ!?」 「なら俺も行く!!」 「よりにもよって……」 その言葉は全て共に手続きをした男への物だった。 相変わらず彼に対して良い印象がないらしい。 「お前、アイツらに何かしたの?」 「……ハァ」 コッソリと隣の男に問えば、盛大なため息が返ってきた。 いや、そんな興味のないような呆れた目をしなくてもいいだろう。 わかってるさ、ただの冗談だろ。 「あらあら〜、いおちゃん皆んなに愛されてて幸せねぇ〜」 こちらも変わらぬ母である。 父はそんな母の肩を抱いて笑っている。 「あの学園は変わらないな」 「それほどでも」 「褒めてないだろ」 いや、叔父まで見送りに来るとは、それこそこちらが聞いていない。 そもそも父と叔父が兄弟として話しているところを見るのも意外と貴重である。 対する敵意を向けられている男、大堂の家族は誰一人として見送りに来ていない。 「別に、特に気にしてない。奴らは目立つ」 言葉に出したわけではないのに、視線だけでこちらの言いたいことを悟ったのか、大堂がこれまた小さな声でボソッと告げた。 確かにザ・極道って感じの出立で空港(ここ)に来ればそれは目立ちもするけど。 それを言ったら、彼らも相当目立っている。 「兄をよろしくお願いします」 唯一、大堂にとって身近な人間が礼儀正しく頭を下げた。 「あぁ」 短いその返事の中に、少しだけ人間らしい年相応の感情を感じ取ったが、そこは冷やかさずに見守っておこう。 さぁ、ここからがスタート。 「行ってきます」 沢山の大切な人に見送られ、相棒と共に新たな道へ足を踏み出した。
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