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 薄い銀色の刃が男の身体に入って行く。  僕は思い切り力を入れてなんかいないのに。特別力持ちでもないのに。  人間の身体って硬い。結構硬いよね? ……だけど柔ら、かい? どうして?  すぅーっと何の抵抗もなく吸い込まれて、というわけでもない。だけど。  刃から、柄から、何かが流れて来たような、──気がつくと掴んでいた柄は僕の手からすり抜けていた。  崩れ落ちたその男の背中からナイフを引き抜いて、ポケットの中のタオルハンカチでくるんでそのままポケットに入れる。後ろは振り向かずに、僕は走って家に帰った。  学校帰りは寄り道しないで真っ直ぐ帰ることになってるから。……僕は「寄り道」はしてないけど。  家に着いて、ランドセルから鍵を出そうとして初めて気がついた。手に、血がついてる。たくさん。まだ、乾いてない。  どうしよう、と思ったけど、仕方がないから僕は着ていたシャツで手を拭いた。  幼稚園の子みたいでやだな。
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