婚約破棄をされ、処刑された悪役令嬢が召喚獣として帰ってきた

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シアーナ王国 現国王の[ロマンス]は国民の間でも物語として流行っていた 「真実の愛の物語」は、皇太子と男爵令嬢という身分差を超えて結ばれた王と王妃の話で それには元婚約者で美しい侯爵令嬢が悪役として登場する、その悪役令嬢は男爵令嬢を執拗にいじめて、最後は殺人未遂まで行ってしまった 彼女は、裁判で罪に問われ毒杯を飲まされ・・・処刑された その話は劇場でも上演されるほど流行っていた もう32年も前の話である ここは王都、貴族の令嬢令息が通うロマノフ学園 其処にその真実の愛の子、第4子で唯一の王子が通っていた 遅くに出来た念願の男の子だったため、大事にされていた王子は 現在16歳、名は ロバート 『純粋鬼畜』の異名を持つ稀代の 天才(きちがい)である 「国王陛下ようこそお越しくださいました、少しは威厳が出て来ましたかな」 「学長、久しいの・・・おぬしはあまり変わらんの」 エルフの学長は20台後半の好青年に見えるが実際は184歳、平均年齢600歳のエルフの中ではまだまだ若造である 国王は現在50歳、二人には女の子ばかりで男の子がなかなか出来なかった、ロバートはやっと出来た待望の王子だった 王子はとても見目麗しい姿をしていた、まだ成長期の王子は幼さがのこっており、 その姿に皆、騙されていた 好奇心旺盛で、正義感が強く、理不尽なことが大嫌いだった 不正や殺人を行った貴族を即座に殺した話は有名である 学園での成績は殆ど満点、戦闘力もだれも止められないくらいな能力があった 唯一の王子に物申す人間が、魔法学以外取柄の無い侯爵家三男の魔導士だった 発表会では上位成績の生徒が次々に力を示し、最後に王子の召喚の儀式が行われる予定だ それまで次々にAランクの獣型の魔獣を召喚していたので期待が膨らんでいた 王子の召喚の儀を皆、集中してみていた、 前の生徒より大きな魔法陣がコロシアムに広がる バリバリと雷が魔法陣の上を這う 中央から黒い煙が渦を巻くように上がるとその中からそれは美しい女性が現れた ざわざわと周囲にざわめきが上がる ストレートの黒髪に赤い目、耳の上には羊の角のようなまがった黒い角が生えていた、グラマラスな躯体は、それは色気が凄まじかった、背に大きな槍を担いでいた 「エリザ」 そう言ったのは王だった ゆっくりと王子の方に向かって歩き出す女性、そして王子の前にひざまづく 『わが(あるじ)の召喚に応じ参りました、魔人のエリザベートと申します』 「うんっ・・よろしくね、ネームド魔獣なんだね・・・ステータス・・・いいねぇ、僕より強い人はじめてだ・・・さすがSSランクの魔人だね」 「ロバートさまぁ~すごいです!魔人!それもSSランク・・・でも何処かで見たことあるような」 「ヘイゼル!私の召喚獣の方がすごいだろ」 「まだ根に持ってたんですか、私がSランクの神獣のフェンリルを召喚したこと、器が小さいですよ」 侯爵家三男のヘイゼルはロバートの一つ上で先に召喚の儀を昨年にもう終えていたのだった ロバートが平気で不正を行っている貴族の首を切り落としていることを知っても、ほかの皆は、おびえるのに 魔道バカのヘイゼルは、変わらずずけずけと文句やため口を言う唯一の人間である 王子が魔法を使うたびキラキラと目を輝かしてみている、魔道バカ・・・魔道オタクである 「でもさすがです魔法陣のあの美しさ、MPはどうです?かなり減ったんじゃぁ」 キラキラの目で王子に迫る 「はぁ・・・相変わらず魔法のことばかりだな、半分以上減った」 「王子の魔法はどれも美しいですからね、あいかわらず膨大な魔力ですね,SSランク召喚して半分ですか、好きです(王子の魔力)」 「私はその気はないぞ」 「なっそういう意味じゃ」 「はっはっは冗談だ」 王子がケタケタと笑っていた 「あれが、作り笑いじゃなく笑うのはヘイゼルの前だけじゃな」 王がそう言って学園長を見る 「あの召喚獣はどう思う・・・」 「・・・・目の色と角以外そっくりです・・・」 二人は声を震わせて、ぎゅっと握りこぶしに力を入れた 「あー思い出した、悪役令嬢にそっくりなんだ」 かなり大きな声で叫んだヘイゼルだった 悪役令嬢の姿は普通に貴族図鑑に載っているので、見たことのあるものは多い そしてそのヘイゼルの言葉を聞いた王子の目がキランと光った 会場はざわつく、生徒の両親や祖父母がかなりの数見学に来ていたからだった 王子の桁外れの観察力で青ざめている人間を確認していた 『誰から殺りますか?』 そう魔人のエリザベートが背中の槍を手にもって冷たい声で王子に言う 「さすがだね、私のわずかな殺気に気が付くなんて」 「ちょっと物騒なこと言わないでくださいよ、スプラッタ苦手なんですから」 「殺すのはだめだって言わないのだな」 「えー僕が止めても殺すでしょう?でも悪人しか殺さないじゃぁないですか、僕の前ではやめてくださいってことです」 「エリザベートって人を殺したことあるの?」 『前の主人は異世界の王でしたので、戦争で何万人も殺しておりますが、それが何か』 「へ・・へぇ・・・エリザベートって何歳なの」 『魔人に年齢はありません、大体でよろしければ魔人になって1000年くらいですね、精霊界では若い方です、そちらのフェンリル殿の方が歳で言えば年上です』 フェンリルをもふる、ヘイゼルを見て言った 「人型だと契約者以外にも召喚獣の声が聞こえるんだね」 『いえ、本来なら理解できません魔人語は特殊なので、なぜかこの国の言葉を知っているので、それを使っているからだと思います』 「フェンリルがヘイゼルには人がしゃべっているように聞こえるが、私にはガウガウってしか聞こえないのと一緒ってことか」 『ファリゴフィッガ(魔人語です)』 「何言ってるかわからない」 「私は分かったな」 「すごいです!発見ですおもしろい~」 「興奮するなヘイゼル。おちつけ」 「人型の召喚獣は珍しいですからね、新しい発見ですよ」 興奮して、会場のざわめきが聞こえないヘイゼルだった 退場のアナウンスが流れる 会場を出ようと歩き出したロバートは思い出したように 「父上~!やりましたSSランクです」 ロバートは貴賓席の方を向いて大きく手を振って王を見た それに追随して魔人エリザベートも王を見る その無表情で冷たい瞳は王を睨んでいるようだった 「ひっ・・・」 王のかすかな悲鳴は学園長のみが聞いた 「ロバート王子~なぜ魔人エリザベート殿を常にそばに置いているのですか?魔力の無駄使いというか、SSランクの召喚獣をを常に具現化していられる魔力はすごいですけどね」 「えー面白いから~知ってるか?ロマンスの時代に、父上の周りにいた連中の顔!青くなったり白くなったり赤くなったり、なぜだろな~大体想像つくけどな」 「は~そうですね、当時から冤罪の噂はあったみたいですけどね、冤罪の証拠がないとかで」 「そうそ、やってない証拠もなかったけど、殺人未遂の証拠も実際は証言だけでなかったんだよ、権力で黙らせたって感じだな」 無表情の魔人エリザベートを見る王子 「エリザベートはどう思う?」 『私がその令嬢と似ていることは理解しました、もしかしたら私の前世はその令嬢かもしれません、前世は人間だったと聞いておりますので』 「その言い方だと」 『はい、前世の記憶は全くありませんし、それに私にとっては1000年も前のことですので』 「復讐される~て思っているのかもしれませんね~」 『私は主の命令以外の行動は一切しません、主がしろとおっしゃられれば、復讐の内容を指示をいだだければしますが』 「復讐か、もうしてる気がするな、様子見るかな面白いことになるかもしれないし」 「うわぁ・・・悪役の顔してますよ王子」 王子はその後もエリザベートをそばに置き続けた そんな時事件が起きた 王宮の回廊をエリザベートが一人で歩いていると向こうから、頭がはげている太った豪華な衣装を着た男が歩いて来た それまで回廊の真ん中を堂々と歩いているとすれ違う兵士や侍女などの使用人は、エリザベートの圧に押されて脇によけていた、しかしその男は違った、鈍い奴はどこにもいるもので、エリザベートの怖さを理解していないようだった 「へぇー本当にそっくりだな」 目の前に立ちふさがり言い放った 立ち止まって無表情で冷たく見つめるエリザベート 「いい体してるじゃないか、お前ちょっとこっちに来い」 そう言ってエリザベートの腕を掴んで引っ張ろうとしていた 「ん?来いって言ってるだろう・・・うんっ」 力を込めて引っ張るが1ミリも動かないエリザベート よく見ると男の従者らしき男たちが真っ青な顔でブルブル震えていた 「おいお前俺を誰だと思っている」 ドガッ エリザベートのお腹を殴った 「ぐわっ・・・痛いっ」 悲鳴を上げたのは男の方だった、まるで岩を殴ったように感じた男、腕を抱えて悶えている 「この野郎!」 と懲りずに再度殴ろうとしたところ、エリザベートは軽く腕で男を払いのけた 「へっ?」 ひゅんという音の後に、男は飾ってあった大きな花瓶を巻き込んで10メートルほど吹き飛んだ 何回かバウンドして床に転がる男の手足は、よからぬ方向に曲がっていて、花瓶で切ったのだろう傷だらけでひくひくしていた 「うわぁー」 従者が大声を出した、それを聞いた先ほどすれ違った兵士がやってきた 「何事だ・・・・ボルデン侯爵!?・・・これはどういった状況だ?」 『その男が殴ってきたので応戦しました、主には″ちょっかいかけて来る奴がいたら殺さない程度に反撃してよい″と言われている、証書もあるので抗議は主に』 そう言って亜空間から出した証書を見せる、兵士はロバート王子のサインを見た、「2回目はないよ、しつこくちょっかいかけて来た奴は僕が殺すね」と言う物騒な文章も発見 「・・・たっ・・担架だ、担架持ってこい」 「早く医務室に」 『治癒しましようか?・・・って・・素早いわねもう行ってしまった・・・治癒してもよいとも言われていたのだけど・・・』 騒ぎを聞きつけて遠巻きに何人もの使用人が来ていた 『再生』 花瓶と花が元通りになり、何事もなかったようにきれいな回廊があった エリザベートは主人のお使いである、おやつの催促に厨房に向かうのであった 「なぜ、エリザベートを厨房に?侍女に言えばいいのに」 「面白い事が起こるかもしれないじゃないか、案の定起こったね」 「面白かったですけど・・・軽く手を払っただけで・・・すごい威力ですね」 執務室でエリザベートは回廊での様子を王子達に映像で見せていた 「あれって、部屋に連れ込もうとしてたんですかね、怖いもの知らずですね」 「さて見舞いでも送ろうか、執行人付きで」 悪い顔をしている王子 「さすがエリザベート様ですわ~・・・えーところで・・・ロバートさまぁ、私のこと忘れていませんか」 まだ幼さの残る少女が王子の腕に絡みついて言った 「リリアナちゃんと君の話も聞くよ」 「うれしい」 「くそっ・・・二重人格が・・・」 ぼそっとヘイゼルが言った 「何かおっしゃいましたか?ヘイゼル様」 背筋を伸ばし、甘ったるい感じから一転、大人の淑女の趣で冷たく語るリリアナ 「貴族の集まりではひとつも笑わない、下級貴族令嬢にきつく当たる【冷血の薔薇】、なんて呼ばれているくせに、なんで王子の前だと」 「どっちのリリアナも私は好きだよ」 「婚約者の前で甘えてもいいでしょう、ロバート様もそのほうがいいって言ってくださってるし」 きりっと座りなおしていたのに、ふにゃとまたロバートになだれかかるリリアナだった ロバートのひとつ下の侯爵令嬢リリアナ・ボンバート、ロマンスの時代にエリザベートの無罪を訴えていた数少ない貴族の家系の令嬢だった、ロバートの要望で婚約者となっている、伯爵に降格されていたのだが、国への貢献が高いとして最近侯爵に戻っている 「ロバート様のおかげで降格されていた爵位も戻って来ましたし、王国の膿を出すお手伝いはやりやすくなりますわ」 「早速役に立ったよ、ボルデン侯爵はロマンスの時代にエリザベートの生家の侯爵家の利権を譲渡されて成り上がったくずだしな」 「私がお茶会で仕入れた情報が役に立ってうれしいですわ」 「リリアナ、危険なことだけはしないでね」 「分かっていますわ」 エリザベートの生家の侯爵家は罪人を出したとして、財産没収、爵位剥奪、一族は国外追放となっている 膨大な侯爵家の財産は、当時の皇太子周辺の貴族へと分配されていた 王子からの見舞いはボルデン侯爵家取りつぶしと言う痛いものだった お茶会での噂を元に調査が行われ、侯爵の不正が明るみになった 体中包帯だらけのまま牢屋に入れられた侯爵はそのまま獄中で死亡した 王子のやりたい放題の噂はますます大きくなった 「ちゃんと調査して、裁判所の許可を得て処分しているのに理不尽です」 そうヘイゼルが言った、ロバート王子の執務室にリリアナも含め3人と召喚獣1匹と1魔人が集まっていた 「本人不在の裁判だったからな、周りの人間は知らないんだろう」 「それは侯爵が身動きできなくて出廷出来なかったから」 「自業自得だとはいえ、獄中での死亡は調査してるんだろう?」 「暗殺ギルドの利用が出来なかったから、野良の暗殺者に依頼したようです、証拠が出るわ出るわ」 「暗殺ギルドはロバート王子の軍門に下りましたからね・・・・でもその組織の管理を僕にってのは無理がありますよ~ほかの人にしてくださいよ~弱いのに」 「お前を弱いと思ってるやつはいないだろう、Sランクのフェンリルを使役している時点で、国内ナンバー10に入る強さだぞ、たとえ剣術がへっぽこだとしてもな」 不服そうな顔をしながらフェンリルをもふるヘイゼルだった 暗殺ギルドから放たれた刺客はロバート王子に返り討ちにされ、さらにアジトを突き止められた 暗殺ギルドの構成員達は、自害も許されず、力でねじ伏せられロバート王子の配下となった ロバート王子が10歳、まだ魔人エリザベートが居ない時の出来事だった ただ、全員が門下に下ったわけではない、殺人に快楽を感じる者や、プライドが高く門下に下りそうにないものは首を撥ねて殺している、その首をさらして凱旋してきた王子率いる騎士団が王都に戻ると、その可愛い顔の裏にある「鬼畜」が見えるとして『純粋鬼畜』の異名がつけられた 「芋づる式に不正貴族が洗い出されましたわね」 「全員処刑とはやりすぎな気もするんですが」 「強姦殺人に、人身売買、領民、商人からの不正搾取、麻薬に他国への情報漏えい・・・かばう要素全く無いと思うが」 「一族全員ですからね・・・」 「やっていることを知っていて、その恩恵にどっぷり浸かっていたら同罪だろう」 「殿下、グランバート辺境伯様がお見えです」 部屋の前の護衛が客の来訪を告げる 「叔父上、師匠」 うれしそうに駆け寄るロバート王子 ロバート王子の父である現在の王の弟のグランバート辺境伯は、ロマンスの話題にまぎれて辺境伯に婿入りさせられ、無理やり王位継承権を破棄させられた元第二王子だ また、密かに本当はロバート王子はグランバート辺境伯の子ではないかと噂されるほど良く似ていた そしてロバート王子の剣術の師匠でもある、現在国内2位の実力の持ち主だ、1位はロバート王子 「ロバート、ますます強くなったみたいだな、差がどんどん広がるな」 「叔父上も強くなられましたね、わかりますよ」 「まあ、前はドラゴン討伐に単独で15分かかっていたが、今は30秒で倒せるようになったがな」 「すごいですね」 「いや、一瞬で倒すおぬしに比べたらまだまだだよ」 「二人は何の話をしているんだ・・・ドラゴンは1000人単位の兵士で立ち向かうものじゃ無いのか」 「ヘイゼル様、お二人に私たちの常識は通じませんわ、しかし嬉しそうですわねロバート様」 「この強さと仲の良さから親子ではと言われるんだよな」 「おうヘイゼル、魔道バカは相変わらずか、リリアナ嬢も相変わらず美しいな」 「ご無沙汰しておりますグランバート卿、日々魔道の道にまい進しております」 「ありがとうございます、グランバート様の凛々しいお姿を久しぶりに拝見出来まして嬉しく思います」 二人は丁寧に挨拶をした 執務室には奥にロバートの大きな執務机、両脇にヘイゼルとリリアナ用の執務机が置いてある そして中央にソファーがあり、両脇に4人は座れる大きな長いすに奥に一人用でも豪華なソファーが置いてあった 一人用にロバート、右にヘイゼルとリリアナ、左の長いすにグランバート辺境伯がドンと座った グランバート辺境伯は常にロバート王子の斜め後ろにいる魔人エリザベートを気にしていた 「父上への定期連絡ご苦労様です」 「連絡なら俺一人でもいいのに、大隊連れて来いなんて毎年遠征並みに金がかかる・・・・まぁそれが目的だろうけど」 「反旗を翻すかもと恐れているんでしょう、叔父上にはその力がありますから、暗殺も出来ませんしね」 「王様なんてめんどくさい地位、俺狙ったことねぇんだけど」 「小心者ですから父上は」 「言うねぇ・・・俺としたら可愛い甥に会えるからいいけどよ、姪には会いたくねぇけどな」 「はは、姉達は・・そうでしょうね・・・・その・・・叔父上・・・もしかしたら僕たち、甥と叔父では無いかもしれません」 「・・・どういうことだ・・・まさか」 「たぶん想像と違うと思います、実は私の召喚獣の魔人エリザベートが親子鑑定が出来るんです」 「魔人エリザベートだと・・・その後ろの女性のことか」 『お初にお目にかかります魔人エリザベートと申します』 無表情で軽くお辞儀をする魔人エリザベート 「声まで・・・」 「声も似ているのですか?」 「・・・・あぁ似ている、いや、そのものだな」 「どうぞ」 ロバート王子はハンカチをグランバート辺境伯に差し出した 「悪い・・年かな涙もろくなっちまった」 「噂は本当でしたのね」 「私が好きになったから、兄はエリザベートを婚約者にしたんだよ、そして侯爵家を陥れた、邪魔な俺を辺境に送ってな」 「常に苦言を言ってくる侯爵とエリザベート様が目障りだったそうですよ、それと侯爵の莫大な財産目当て、父の側近たちは糞どもばかりでしたからね」 「ロバート、その証拠は?」 「皆エリザベートの前だとすごく饒舌に語ってくれましてねぇ、拷問せずに調書が取れました」 「いやいや、王子あれは十分拷問ですって、あんなに皆死んだと思うくらいの殺気向けさせといて」 「ヘイゼル、同じ殺気向けさせたけどお前は大丈夫じゃないか」 「おっ王子・・・向けさせてたんですか」 『フェンリル殿が守っておられました』 「優秀な召喚獣だねぇ」 「王子・・・・私で遊ばないでください、エリザベート殿の殺気は私だと気絶か、それどころか心臓止まります」 「派手にやってると聞いていたが・・・」 「伯父上に手伝ってもらおうとも思っていたんですが、エリザベートのおかげで思ったより早く掃除が出来ました、近いうちに父・・いえ兄にもその椅子を渡してもらおうと思っております」 「・・・・兄か・・・・やっぱりそうか、私も伯父ではなく兄か・・・」 「そういうことです」 「あの隠居じじぃ・・・懲りずに・・・」 「女の子しか産めなかった母が焦ったのでしょうね・・・ご機嫌伺いに先王の離宮にしょっちゅう行ってたそうですから」 「まぁ俺らには逆に女の兄弟は居ないからな」 グランバート辺境伯はソファにのけぞって顔を手で覆っていた 「他のご兄弟はどうされているのですか、聞いたことがありませんわね」 「糞じじぃは手当たり次第手出すもんだから、俺の下に5人の弟・・・6人になっちまったが居る」 「下級貴族や平民の女性を母に持つものが多くて、お袋が継承権破棄の書類にサインさせてお金持たせて追い出していたよ、兄と俺だけが母の子だ」 「大変でしたね・・・ロバート様は・・・・」 「僕はそんなことしないよ・・・やだなそんな目でみないでよリリアナ」 頬を膨らましてリリアナはそっぽを向いた 「最近男爵令嬢と学園で良く居るのを見かけましてよ」 「くすっ」 「なんなんですか」 「かわいいなって思って」 「なっなっな・・・」 真っ赤になるリリアナ 「大丈夫だよもう彼女は居ないから」 「え?」 「ほら、断罪リスト見たでしょ」 「あっ・・・処刑欄に」 「そういうこと」 「言ってくださればよかったのに」 「ポーカーフェイスは得意だけど演技のデレは苦手でしょ・・・可愛かったなぁリリアナのポケーとした赤い顔」 「もう・・・信じてましたけど、・・・・言い聞かせてました」 ポロポロと涙を流すヘリリアナ 「ごめん・・・やりすぎた、速攻で終わらせたつもりだけど」 いつの間にかリリアナの横にすわり手をにぎっているロバートだった 「殿下・・・突き飛ばさなくても~」 いつの間にか床に顔面から倒れているヘイゼルだった 「あいかわらずリリアナの事好きなんだなロバート」 「あっ・・・はい」 向かい側で大笑いするグランバート辺境伯 その後学園を卒業、王太子として公務をこなしリリアナが学園を卒業したと同時に結婚式をあげたロバートだった 王宮の一室に 王と王妃それに宰相(断罪の時に新しい宰相になっている) グランバート辺境伯と、妻のリリアナを含め官僚たちが集まった会議室 王は正面ではなく後ろの方にオブザーバーのように座っていた 「では戴冠式についてです」 宰相が会議を始めた 「ちょっとまて、私はまだ引退するような年ではない、まだ王で居られる」 「父上、王の仕事全くしてないではありませんか、傀儡(くぐつ)の王など公費の無駄です」 いきなり叫ぶ王だった 「王よ現在執務を行っておられるのはロバート王太子殿下です、事実上王の役割をなされていないではありませんか」 「そうですな、王とはいえませんな」 「なっなっ、我に仕事を回さないからでは無いか」 「ロバート殿下に采配をお願いした方が確実で早いのです、王に回すと官僚の負担が多くなり非効率なのですよ」 「まことに、ロバート殿下にお願いするようになってからは、定時に帰れて助かっております」 だれも王の味方は居なかった 前までは、王の取り巻きで固めていた しかし今や、会議の面々は誰一人として王の味方であった者は居なかった 「ロバート、おぬしいい気になりおっ・・・・っ」 言いかけ立ち上がろうとたとき、目の前にエリザベスが立ちふさがった 「ひっ・・・」 震えあがる王 エリザベスは座る王を見下ろす、じっと無表情で かたかたかたと膝が震える王 「エリザベス、威圧で殺さないでね・・・それでも一応、王なので」 「かしこまりました、(あるじ)に殺気を放たれたもので反応してしまいました、威圧はレベル1ですので死にませんが」 横で黙っている王妃、ちらちらとエリザベスを見ている いままでずっとエリザベスを避けていた王妃、何かされるのではと恐怖の毎日だった 自分が貶めて処刑した令嬢とそっくりな女性、王の隣でレベル1の威圧を同じく受けて真っ青になっていた ちらっとエリザベスは王妃を見た、今は威圧は放っていない見ただけだったのだが がたんと椅子から落ちる王妃・・・気絶していた 「お待ちください、今は会議中です関係者以外は立ち入り禁止です」 ドアの向こうの警備の兵が叫んでいる 「生意気ねあなた」 「言ううこと聞かないとどうなるかわからないわよ」 「どきなさいよ、私達は王女よ関係ないわけが無いでしょ」 バシッと何かを叩く音がした 「はぁ・・・なんで来るかなぁ厄介な奴ら・・・とりあえず母を運んでくれるか」 下の席にいるメンバーに指示を出したロバート 「次期王の話に私達を加えないとはどういううことよロバート」 部屋に無理やり入っていた王女達、扉の向こうの兵士の頬が赤くなっているのが見えた 一子の長女のグリエラ 32歳 隣国王家からの出戻り 子無 ニ子の次女のマリエッタ 30歳 国内侯爵家からの出戻り 子供一人女の子 三子の三女のフロリア 29歳 国内伯爵家からの出戻り 子供一人女の子 四子の長男ロバートは19歳 既婚 王太子 子供はまだいない ロバートの前に出る人影 「ひっ」 「なによあんた私をだれだと」 「きゃー」 槍を3人に向けるエリザベート 『主に仇なすのなら容赦はしない』 エリザベートが3人に立ちふさがる 「エリザベート武器は禁止って言っただろう」 『はっ・・・申し訳ありません』 槍を仕舞うエリザベートだった 「なによ・・・相変わらず怖いわねあなた・・・」 「姉上、下手に刺激しない方がいいよ、1年前の戦場で私につばをかけて来た捕虜が木っ端みじんになり、その後、敵の本陣に最大級の爆裂魔法を放って全滅させちゃったんだから彼女」 「いやぁあれはすごかった、恐怖もあったけどこれで部下の兵士を失わずに済んだことに安堵したよ」 そう言ったのは将軍だった 「と・とりあえず王位継承の話に私らも加わるわよ、だれが王になるかよね」 「次期王はロバート様です、これは決定事項です」 「何を言ううのよ、私は長女よ、王位継承権一位でしょう」 「はぁ・・・グリエラ様あなたはもう王族でもありません、嫁いだ時にこの国の国民ですらなくなっております」 「帰って来たのだから元に戻るのが当たり前でしょう」 「そう言った法律はありません復帰することはありません」 宰相が言うが納得していない様子だった 「一応女伯爵の地位は王の指示で与えられておりますが、王女に戻ったわけではありません」 「お姉さまは国外に嫁がれたからそうだけど私達には」 「継承権はありませんよ、お三方とも嫁がれるときに継承権放棄の手続きをされております、離婚されてもそれが戻ることはありません、それを言われるのでしたら王位継承権復帰出来るのなら王弟のグランバート辺境伯が継承権1位になります」 苦虫をつぶした様な顔をしている姉達だった 「そもそもさぁ・・・素行の悪さで離婚されるような人間に王が強まるわけないだろ」 「ロバート、私達は何も悪くないわ」 「侍女をことあるごとに叩く、兵士に色目を使う、わいろを受け取るお金を湯水のように使う、3人が3人とも同じような理由で離婚とは、王家に恥をかかせてさらに王位の簒奪を狙うとは・・・衛兵、3人を捕らえろ国家反逆罪だ」 ロバートが叫ぶとぞろぞろと兵士が入ってきて3人を拘束した 「痛い痛い、放しなさいよ」 「反逆なんて考えてないわ、ちょっとやめなさいよ」 「お父様、やめさせてよ」 王は真っ青だった、エリザベートがレベル2の威圧で抑え込んでいたからだった、言葉も発せないくらいの恐怖に苛まれていた 「どうなされるおつもりですかロバート様」 宰相が聞いた 「父上と母上は南の離宮で隠居、姉たちは離宮近くの棟に幽閉かな、どう思う法務大臣」 「王家直轄領の北の離宮には先王陛下がご健在ですし、南の離宮なら健やかに過ごせるでしょう、お三方の罪状はこの議会の面々の承認があれば決定ですので、元王女ということも含めロバート様の意見が妥当と思われます」 後ろでうな垂れている王は気力が無くなっていた。 王家直轄領は広い、何人かの男爵、子爵伯爵が領主として町を統括しているが先の断罪で総入れ替えになっている、南の離宮は砂漠の中にあり、離宮の周りは湖もあり過ごしやすいが、隣町に行くのは普通の人間には大変だった、モンスターもでる砂漠があるからだった。 その点、北の離宮はかなり寒いが町は近くて他の町にも出やすい、先王は女癖は悪かったが、街道の整備やモンスター退治の依頼システムの構築、治水にも力を注いだ。女癖以外はそこそこ評判はよかった。その反面現王は税金を上げそれを湯水のように使い(主に王妃と娘たち)政も碌にしない愚王と言われていた。 現王を受け入れてくれる離宮のある町が無かったのだ。西と東は猛反発、税金をかなり上げられ苦労したので、受け入れることを市民に猛反対されたのだった。 落ちた王家の威厳はロバートの功績により数年前から上がっている 半年後 うあぁー 歓声が王都に響き渡っている 教会の鐘が鳴り響く 王冠をロバートの頭に乗せるのは先王、王は部屋にこもりきりになり出てこなくなっていた 「ロバートよこの国をよろしく頼む(女の事なら相談に乗るぞ)ぼそっ」 「はい、先王陛下(私は妻一筋ですのでご心配無用)」 「(我の子とはとも思えんな・・・はははっ)」 「・・・知っておられたのですか」 「まあな」 「あの陛下の侍従の方は・・・似てますね」 付き添いの侍従が先王に似ていることに気が付いた 数日お祭り騒ぎが続いた 戴冠式の後、侍従の事を聞いてみた 「あれ(妻)には内緒じゃ、わが子はかわいいんじゃよ。グランバート卿の所にも潜り込ませておる、あれは武芸に優れておるからなグランバート卿の役にたつじゃろて」 にやにやとロバートを見つめる先王 「まさか・・・」 「あいつ(王)には何度もチャンスをやったんだがな・・・最初から最後まで期待を裏切ってくれたよ」 「私が生まれたのは」 「期待以上だ」 「どこまで計算してたんですか」 「計算なんぞしておらんよ、国が滅びても良いって思っとったからな、殺されそうに何度もなったから、いい加減見限るわい」 「・・・ちゃんと話したことありませんでしたね」 「そうじゃな、また何時でも離宮に遊びに来い、ぜひ孫と一緒にな」 「はい」 先王はエリザベートを見て悲しそうな顔をした 「エリザベート・・・あなたには本当に申し訳なかった、隣国に長期滞在中にあいつがとんでもないことを・・・本当に」 『主の父君、私はその令嬢ではない』 「そうじゃな・・・そうじゃな・・・」 ロバート王は賢君として名を馳せた そしてその横には常に愛妻のリリアナと魔人エリザベートが居た 「私は?」(ヘイゼル) 居たなそういえば 「ロバート様~」 完
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