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 二十一世紀の半ばを過ぎ、この地も随分と都会化していたが、まだまだ農家も多い。  一昔前は酪農だけでなく畜産も盛んだったらしいが、土地柄がたたって殆んど廃れ、今では本当のブランドの牛豚の畜産業のみが頭角を現したのみで、後は酪農や綿麻の生産へと鞍替えしていった。  それに伴って、工場も衣類系が増えて、新しいブランドも生まれて来る。  それを国内で安く売れるよう、都市全体の関係者が、一丸となって働いていた。  そんな中、全く世に知られることのない報告が三つ、計ったように立て続けに関係者の間に行き渡った。  時は前後するが、ある三人がほぼ同時期に弟子を迎えた、と言うニュースだった。  この都市には、いくつかの伝説があった。  そのうちの一つに、まだ十代に見える若者三人が集う場では、どんな難題も解決するというものだった。  当の三人はそんな馬鹿なと笑うが、彼らを知る者たちの間では、一種の願望が混じるその伝説を、事実だと断じる。  願望にしかならないのは、仲が悪いわけでもないのに、滅多に三人が集う事がないせいだ。  仕事に偶然会うことはあっても、プライベートでの鉢合わせは二人まではまだしも、全員が揃う事は殆ど皆無と言っても、いい様だ。  背丈も体格もほぼ同じの彼らは、三人揃えばそれだけでも目の保養になるのにと周囲が嘆く程、見目の整った若者たちだった。  その上、妙に腕が立つ。  一人一人が確かな実力で、この地の裏で君臨していた。  だが、三人が揃って、何か一つの事をなすことは滅多にない。  それなのにその頃、時期は前後したものの、一人ずつ弟子を持った。  しかも、十代前後のまだ幼い少年少女を。
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